幻舟の今日のひとりごと
 近ごろ、とみに増殖する身勝手な人、傍若無人な人、ま、早い話が、唖然呆然とさせられる人類が目に余ります。
 足をいたわりながら、ゆっくり昇り降りする人がそばにいても、ぶつからんばかりに駆け抜ける無神経な人間、それも年齢を問わずにです。
 どうしてしまったのかしら‥‥と、毎日のように考えさせられること頻りです。
 私が旅回りをしていた幼いころ、残酷な言動の人も、真から心無い人も大勢いました。しかし、時折、心やさしい人に出会うこともありました。
 例えば、
「ヨーちゃん、早よ、大きくなって、お父ちゃんのために、な、エエ女優さんになりや」
 といいながら、座員全員に、おうどんを振舞ってくれた大きな劇場主さん。
 芝居小屋の楽屋口に入ってきて、ニコニコしながら、真っ赤なリンゴをひとつ差し出し、やさしく私の頭をなぜてくれた、決して裕福ではなさそうな身なりのお年寄りの女性。もちろん、その反対の言動の人のほうが圧倒的に多かった。
 けれど、心無い人より、少数の上記のような人のおかげで、私に勇気と生きる希望、人間としての、芸人としての誇りをくれたものです。
 人間は、夢や希望があってこそ、今日が、今が、どんなに辛かろうと、明日に向かって生きていけると私は、自分の体験でいえます。
 身勝手な人間や、傍若無人な、情のカケラも無い人らが増殖する近ごろ、誤解を恐れずいうなれば、自殺者の数が増えるのも、当たり前のようにも思えたりします。
「こら、もうあきまへん」
 と、あまりにひどい人間社会を見て“神サン”が、ノアに方舟(はこぶね)を作らせ、“神サン”が選んだ生きものたちだけを舟に乗せさせ、大洪水を起こした‥‥、ノアの方舟のお話です。
 私は無神論者で、まったく“神サン”を信じてませんけれど、あまりにも傍若無人な人類が増えると、“神サン”が怒って、
「いっぺん、すべて一掃しよう!」
 と、そこで『ノアの方舟パート2』いうことになって、地球崩壊!!
 人災、天災等、様々な出来事が世界各国で起きています。まさに、これは“神サン”の怒りでしょうか?
 しかし、よく考えてみると、“神サン”が怒っての仕業かどうかわかりませんが、人災にしても天災にしても、被害をこうむるのは弱い立場の人。
 極悪非道に生きている強者は、非常事態には、金と権力にものをいわせ逃げ切るし、日々、態勢を整え、備えもしているわけです。
 う〜ん、ということは、“神サン”が怒って、天災や人災を起こしたら、弱者(がすべてエエ人とはいいません)が消え、強欲非道で鉄面皮な強者が生き残る結果となるようで‥‥、これは絶望的、えらいことです‥‥ネ。
(2008.5.10記)