幻舟のよろず相談劇場 (2)


 
 どんな問題でも、ひとりで悩むより、他者に聞いてもらうと、フッと、モヤモヤが晴れたり解決のヒントが見えたりすることが人生にはよくあります。
 他者から知恵を得ることも大切で、無知こそ人生の損失です。
 本コーナーは、ホームページを通して、人生経験豊かな花柳幻舟が多岐にわたる悩み相談に真剣に答える自由空間です。ひとりで悩まないで、ぜひメールを!


<幻舟さん、どう思います。ちょっと教えて!>
 
 私は東京の某区立小学校の新米教師です。2年生を2年続けて担当しています。
 私は子どものころから教師になるのが夢でした。というのも、私は算数が苦手でまったく出来ず、同級生から遅れっぱなし、テストはいつも0点に近かったのです。どうやってもさっぱりわけがわからぬままに3年生、4年生と進んだ私は、他の科目も、学校に行くことへも拒絶反応が現れてきました。
 4年生のとき出会った担任の先生が、算数をまったく理解していないことを察知し、毎日居残って、私に1年生からの算数をゆっくり教えてくれたおかげで、やっと私は算数の基礎がわかったのです。
 “今さら聞けない”との思いで、同級生の波に流されてきた自分を知ったというわけです。それは、その先生のおかげです。
 私は、そのときから先生になりたいと思い、大人になってからもその志は変わらず、きめの細かい、特に日々のスケジュールに流されるのではなく、子どもたちのための教師を目指して今日まできました。
 しかし、近ごろとんでもないPTAたちのクレームに、つくづく嫌気がさしてきています。
「お箸(はし)の持ち方を教えてくれないのですか!」
「本人が嫌がっているのに、勉強を教えすぎる」
「嫌いな子の隣に座らせないで!」
「○○君と、うちの子を呼ばないで、○○さんと呼んでください!」
 等々、もうなんでもかんでも教師に向かってきます。
 私はノイローゼぎみに陥っています。幻舟さん、どうしたらいいのでしょう。

【東京都在住・25歳・教員】




<ハイ お答えしましょう!>
 
 先だって、東京某区の小学校で学校側すなわち教師のための顧問弁護士を雇ったというニュースがありました。もうくるところまできたという感ありです。
 学校での集団生活をするため、準備として最低限度の躾(しつけ)は各家庭で入学前にするものです。
 我が子が嫌いなものを給食に出されたといって怒鳴り込んでくる親。経済的余裕のある富裕階層に限って常識外のクレームをつけてくる。これらの非常識な家庭の人らが、給食費未納や滞納などが目立つようでもあります。
 本当の教師の役割を果たそうと思う以前に、愚かな保護者のクレームに翻弄(ほんろう)される今日です。基本的に子どもを愛していなければできない職業。確かにすべての点で職業選択を間違ってしまったような場違いな教師もいます。
 あなたが4年生のとき出会った教師は、教師として当然の対応だったのに、それが“素晴らしい先生”に見えることが切ないですネ。でも、あなたの深層心理を読み、またあなたの保護者の方たちも、真にあなたを愛し心配してくれていたからこそ、その先生を信頼し、おまかせしたのでしょう。

 文科省は「教師の質が落ちた」、おまけに“労働運動”に明け暮れた(?)60年、70年代のあのころの教育が悪い。そんな教師に教育を受けての今日の教員たちの質の悪さ、そこに大きな原因がある‥‥等々と、インネンに等しい発言をしています。
 私は小さいころ、転校ばっかりで小3ぐらいで20数校。立派と思える先生には一度として巡り会えませんでした。そのせいで、教師だけでなく、妙に教訓めいたことをいう評論家や能書きをいう文化人と称す人間たちを信用しません。
 情愛のある真に素晴らしい教師との出会いによって、あなた自身も人間として成熟された大人に成長し、教師を目指して今日まできたことに、私は感動します。あなたは幸せな人ですよ。
 あなたのような人こそ教師であってほしい。我がママだけのハッ倒してやりたいようなPTAのクレームや、心ない“同僚”教師、現場を知らない文科省、その手下となって何にもできない無責任な教育委員会‥‥、数え切れない、まるでコンクリートの壁に囲まれたような、身動きできないあなたの毎日。しんどいでしょう、腹も立つでしょう、でも、ここで思い出してください。あなたが4年生のときに、必死で真心を込めて向き合って、一から教えてくださった先生を。あなたが辞めてしまったら、あなたの小さいころと同じような子どもさんがいたら? その子は救われないのですよ。
 
 人間は緊張だけでは生きていけません。緊張がすごければ緩和も絶対必要。私はネ、つらいこと、心ない人らに会って傷ついたとき、お風呂にゆったりつかり、外国の推理小説を読んだりします。現実からかけ離れたところに意識を持っていく、私のストレス解消法です。
 教師という職業柄ストレス解消法も注意が必要。“敵”にインネンをつけられない方法でのストレス解消法を選ばなければなりません。私のお風呂方法どうですか。
 緊張と緩和をうまく使い分けて、今こそ乗り切ってください。
 子どもに罪はない、むしろ被害者なのですから、ネ。お願いします。