幻舟のよろず相談劇場 (2)


 
 どんな問題でも、ひとりで悩むより、他者に聞いてもらうと、フッと、モヤモヤが晴れたり解決のヒントが見えたりすることが人生にはよくあります。
 他者から知恵を得ることも大切で、無知こそ人生の損失です。
 本コーナーは、ホームページを通して、人生経験豊かな花柳幻舟が多岐にわたる悩み相談に真剣に答える自由空間です。ひとりで悩まないで、ぜひメールを!




<幻舟さん、どう思います。ちょっと教えて!>
 
 私は、公務員の妻で、結婚生活25年になります。
 夫の浮気というか、移り気に悩んでいます。
 私の夫は、役所に勤め、相当の立場にあり、しかも、“人権・福祉”等に関わる身分です。おまけに、週1回、地域の子どもたちに剣道まで指導しています。
 外面(そとづら)は実に律儀で、多くの方に信頼されています。しかし、内実はわがままで、自分のことしか考えない、軽薄な人間です。それは、25年付き合ってきた私が一番わかっております。
 彼の象徴的な姿だと私は思いますが、不必要な見栄を張ります。高級な外車に乗って役所に通うのも、その一つです。
 何度か浮気が発覚し、その都度、土下座をし、泣きながら謝ります。
 夫の本心は、離婚ということになるのが世間体に“恥ずかしい、みっともない”というだけで、私への愛情からの謝罪では決してありません。
 彼の両親も同居で(最近、義父は亡くなられましたが)、子どもは長男もおり(長女は大学に入り、東京へ行きました)、とにかく、事を荒立てないようにと、その都度、飲み込んできました。それに、私自身、自立する生活力もありません。
 なぜ、このようなお手紙を書いたのかといいますと、この度の“浮気”の相手の方と夫との間に交わしたメールを発見したからです。
 そのメールでは、今度の彼女は、仕事を持つ自立した 独身者 のようです。夫は、感情のおもむくままに、彼女の前に現れたり、甘い言葉のメールや電話をしたりしていて、半年ほどの付き合いのようです。
 彼女は最後に、
 
――自己保身だけのあなた。私を惑わすような言動はやめて。二度と私の前に現れないで。私は本気で愛していたのです。――
 そんなメールが残っていました。
 同じ女として、彼女は立派な方だと思います。ひとつ間違えば、夫が一番恐れるスキャンダルにでもなりかねない。しかし、彼女は愛する人への想いを断ち切って メールを発信したと思います。
 幻舟さん、どうしたらいいのでしょう。離婚に踏みきるべきなのでしょうか。こんな男と老後を迎えるのかと思うと、背筋が寒くなります。
 しかし‥‥、自分の生活のことを思うと‥‥、教えて下さい。
【熊本県・主婦・49才】




<ハイ お答えしましょう!>
 
 失礼かもしれませんが、こういう男性は、周りの人ら みんなを不幸にするだけにとどまらず、ご本人も、すべてを失う結果となるのは 火を見るより明らかです。あなたのおっしゃるように、相手によっては、とんでもない、犯罪的ワナにかかる可能性も含んだ話になることも、充分予想されます。しかし、そんな想像力さえ欠落しているのが、こういう男性です。

 先ごろ、高校の“立派”な校長が、教え子と交際をしていて、卒業後までその関係が続いていた。女性として成人したその子も、妻子のある校長との 不純な 関係を断ち切りたいと思ったのでしょうか、別れ話を切り出した途端、“立派” な校長は豹変(ひょうへん)、ゴロツキさながらの脅迫者になったというニュースが明るみに出ました。
 この校長も、自己の立場をかえりみず、それでも外面だけは取り繕って、公の場では、立派なことをいっていたんです。そのへんのチンピラ(比較してゴメン。チンピラの方に謝ります)顔負けの人間です。
 人間は、いくつ、何十になっても、人を愛する心は喪失すると私は思いません。それは性的にもです。だけど、そのとき、その感情をどのように制御するか! そこが、人間としての、教養が問われるところなのです。
 私の経験でも、ありましたヨ。
 長期間の仕事でのこと。相手役の、ある有名な男優さん。クールを売りものにしているその方のお誘いで、お酒と食事に。相当酔ったふりをしながら、私にしなだれてきた彼。
 私を挑発する彼にいいました、
「仕事がすべて終わって、それでもその気が残っていたら、ネ‥‥」
 と、恥をかかさないように。
 仕事期間中にそんな関係になることは、自分のためだけでなく、他のスタッフにも失礼なこと。その男優さんには、妻子もいらっしゃいました。にもかかわらず、酔っ払ったふりをして“酒の上”という“アリバイ”まで作っての卑劣な行為には呆れるばかり。
 その明くる日、彼は、ケロリとした顔で、他の女優さんにしっかり エロ・フェロモン をおくっていましたネ。
 話を戻します、ね。
 あなたの夫は、子どものまま、単に大きくなっただけの人なのでしょう。
 大人とは、他者を思いやる心や、自分が生きていることに責任を持つことなど、社会で生きる、人としての、大きな負担も背負っていかなければなりません。
 外面(そとづら)だけでなく、家庭を持ったら、家庭人としての大きな責任がのしかかってきます。それは男も女も同じことなのです。あなたの夫は、その点も、まったくわかっておられないし、こういう性格の人は一生変わりません。その変わらない夫と、覚悟を決めてやっていけるのか、ということなのです。
 “自立して生活が出来ないから”とおっしゃっていますが、それは、まだまだ本気で夫に愛想がついていないのか、まだ愛しているのか、それとも、あなた自身、人間としてのプライドより、打算だけでふんぎれないのか、どうですか?
 離婚をマイナスにとらえて、『バツいち』などと、ふざけた言葉が 共通語 のように使われています。しかし、この言葉は、お笑いタレントが自分の離婚について、商売の ネタ にした言葉なのです、私はこの言葉、大嫌いです。
 離婚が、すべての経験者に『バツ』とは、私は決して考えません。
 私自身、離婚により、自分の幼さや、それに付随して 結婚生活がいかに人間関係において、自我を抑えなければならないか、等々 多くを学びました。そして、一緒に暮らしてみて、相手の中にある本性を実感し、反面教師 としてとらえる 学習 も出来ました。
 女性にとって、離婚を、負のイメージだけでとらえるのは、男尊女卑における 封建制 の名残りと、私は考えます。
 人権やプライドを死守するためには、貧乏しても、胸張って、生きていけるものなのですよ。