幻舟のよろず相談劇場 (2)


 
 どんな問題でも、ひとりで悩むより、他者に聞いてもらうと、フッと、モヤモヤが晴れたり解決のヒントが見えたりすることが人生にはよくあります。
 他者から知恵を得ることも大切で、無知こそ人生の損失です。
 本コーナーは、ホームページを通して、人生経験豊かな花柳幻舟が多岐にわたる悩み相談に真剣に答える自由空間です。ひとりで悩まないで、ぜひメールを!




<幻舟さん、どう思います。ちょっと教えて!>

 『おひねり』という言葉を教えてもらったのは、もう亡くなった祖母。近所に「芝居小屋」があって、舞台の役者さんが、ここぞという「所作」のとき、白い紙に包んでお金を投げた、それも何十個もの包みを一挙に投げたそうです。
 その話を聴いて、私も一度経験がしてみたいなと思っているところで、幻舟さんの著書『逃げたらあかん!
』(KKロングセラーズ)を読んでいたら、その『おひねり』の話が出ていました。ますます興味をそそられました。
 人に「お金」や「物」を投げることにやや抵抗はありますが、『おひねり』に関しては許されるのですネ。
 ところで、ここで質問です。
 『おひねり』の場合、一個にどれくらい包むものですか。 500円玉を「ひねる」となると、えらい力がいりますが、この場合どうしますか。そして、「おつり」や「領収書」はいただけないものですか。消費税も一緒に包むのですか。
 『おひねり』の作法、マナー等あれば教えてください。
 ぜひ『おひねり』を投げたい。それも幻舟さんの舞台の折に。
 ご指導、よろしくお願い申し上げます。

        【大阪府在住、何でも興味を持つ、幻舟さん好み(?)のエエ男より】





<ハイ お答えしましょう!>
 
 『おひねり』は『はな』ともいって、小銭を包んだチリ紙 (「花紙」「鼻紙」ともいいます)が、舞台にたくさん投げられ、まるで花が舞うように美しく散るわけです。包まれた中身すなわち金額ではなく、いうなれば舞台に「はな」を「添える」といった観客からのエール、それによって演者に力を与える、早い話が観客と演者とのコミュニケーションのようなものとお考えください。
 領収書と消費税のご質問ですが、私の場合、会社『(有)花柳幻舟人民劇場』の安月給取りの“サラリーウーマン”。給与所得以外の「雑所得」(おひねりやお祝儀等)の金額は年20万円までは申告しなくてもいいとなっていますので、領収書も消費税も関係ありません。第一、踊りの最中に、おひねりの中身を確認して領収書を出すひまがないのです。
 そして、20万円を超えるおひねりを投げる気もないでしょう? どうです。もし20万円超えて投げてくださるときは、住所、氏名等をおひねりの包み紙の中に入れておいてください。追って領収書をお送りいたします。なお、お札を投げていただくときは、飛びやすいように、重しの代わりに 100円玉とかといった硬貨を一緒にチリ紙に包み投げてください。もちろん、演者に当たらないよう、お願いします。
 けど、すごい人が過去にいました。
 劇場の入り口で、「幻舟さんに、これを!」と、粋にお祝儀(カンパかな)をくださった、ある有名なジャーナリスト。
「領収書を下さい」
 と、5000円札を持ったままで一言。入り口でカッコよくみせた割にはお祝儀やカンパに領収書、セコイなアと、この出来事はいまだに笑い話として伝わっています。これは、取材経費として落とす気だったようですね。
 ところで、500円玉を “ひねる”とありましたが、特別法に、「貨幣損傷等取締法」というのがあります。

 (1)貨幣はこれを損傷し又は鋳(い)つぶしてはならない
    これを違反した者は1年以下の懲役又は20万円以下の罰金に処する。

 以上の通り、500円玉をひねり曲げたら(出来たら)、犯罪です。それに、もしひねり曲げられた500円玉があったとして、私、元に戻すそんな力ありません。昔、ユリ・ゲラーなんて人がいましたが、彼でも頼まないと、けど彼に会うためには500円ではとても無理。
 講(公)演のとき、お知らせいたしますので、500円玉も、チリ紙に包んで、ぜひどうぞ「花を添えて」ください。