今年も１泊２日で父に会いに行き、母のところへも行ってきました。お墓参りとお寺参りですよ。 　私の幼い頃、父と母は離婚していましたので、亡くなって眠るところも、２３０キロは優に遠く離れた場所です。 　長期間のお休みが取れませんので、電車の乗り継ぎを段取りよくやらなければなりません。 　父の遺骨は、本家（『家制度』はよくわかりませんが、父は一番末っ子で、分家の子になるんだそうです）の大きなお墓の中に分骨して入れてもらい、半分の遺骨は永代供養で、私の弟が眠る、京都のお寺さんに入っています。 　季節は決めていないのですが、仕事の都合を見つけ、みじかい、ひとり旅を毎年します。 　毎年のことながら、時刻表を広げて、 “これにするか？　この電車にするかなあ…” 　と、ひとり、時刻表で、スケジュールを作るとき、父も母も、幼いとき極貧の旅回り先で亡くなった弟も、私の身近にスーッと近寄り、現在 家族や肉親の情など、ほとんど“ご縁”のない私ですが、まるで家族会議をしているような、私、たったひとりなのに、急に、部屋中がにぎやかになる感じで、ある種、至福のときを過ごします。 　今年は『家族』に会いに行く前、友人のご招待で山口県にお邪魔しました。４年ほど前にお邪魔させていただいて、今回で２度目です。友人のお宅ではなく、友人のパートナーのご実家です。 　このパートナーのお母さんが私は大好きで、２泊もさせていただきました。 　おっとりしたものいいで、静かに時間が流れる、そんな空間を作ってくれる、７０歳半ばくらいかな、美人のお母さんです。 　私はお母さんの横に座り、食事。フッと気づくと、私をやさしい眼差しでじっと見つめるお母さん、 「ひとり暮らしで食事、淋しいねエー」 　と、私をいたわりながら、小さいお声でつぶやいておられました。 　今はいない私の母は、生前、ひとり暮らしで、東京にいる私としては、常にこの言葉と同じ思いで、母を案じたものです。母は母で、私と会う度、 「ひとりで食事、あんさんも淋しいやろ？　けど、ケッタイな男と一緒では、苦労させられたり、いまさら気苦労もなア〜。引っかかったらあきまへんデ。けどなア〜」 　と、母らしい質問と答えを繰り返し、きっと自分自身に問いかけ、答えていたのでしょう。

（撮影・幻舟）

山口県の２泊は、まるで母と過ごしているような、静かな、温かな、人の情を呼び起こしてくれる時間でした。おまけに、同居しておられるご家族が、ベタベタした雰囲気も一切ありません。 　私自身の勝手でしょうが、“家族ぐるみで団欒(だんらん）のひとときとやら…”そういう場面を見るのが一番いやです。それはどうやら、幼い頃のトラウマなのか、居心地が悪くなってしまいます。

海がそばで、魚市場も近くにあったりして、 お魚好きの私としてはまるで、天国の２泊でした。

しかし今回は、問題点発生! 　前回、初めてお邪魔したときにはいなかったのに、写真にある子犬がいて、これにはマイッタ！

キーの高いキャンキャン声で、わけもなく吠（ほ）えまくる。 　特に私をめがけて追いかけてくるんです。おまけに、すぐ、噛みつくとか。 　大型犬は大丈夫だけど、キャンキャン声の、落ち着きのないこの手の犬は、私、ギブアップ。

ご家族のいないときに、「ジャカマシイ！」と、ガツンと一発、得意のまわし蹴りをおみまいしたろか、と思ったんですが、逝ってしまった私の母にどこか似ている、やさしいお母さんの立ち振る舞いを見ていると…、それは、どうもイカン。で、とにかく我慢しました。 　美味しいお魚いっぱいよばれて、父と母、弟に１年ぶりに会えた旅。 　今年の夏の、小さな旅の、小さな休暇でした。