トピックス



<どんな場合でも、ピッタシのセリフって、大切ですねェ〜>


 毎年入る、人間ドッグに行った朝のこと。
 ちょっと早めに病院に着いてしまったので、広々としたロビーの長イスにユッタリ座り、本を読んでいた。
 フッと気づくと、私の左横 相当近くに、高齢(?)者かなア〜、私はどうも人の年齢がよくわからない、相手の年齢が読めない人間のようで、ま、その人、中年ではないだろうという程度のオッチャンが、いつの間にやら座っている。
 周りを見渡すと、広々といっぱい、イス 空いているのに、なんで? と思ったころだったかなア、私の左下半身というのか、オシリと長イスの間に、オッチャンの右手が、スーッと差し込んできた。
 ゲ〜ッ! なに? う〜ん、イスの背もたれの間に、なんか、忘れ物でもしたのか‥‥、けど、こんな朝から、忘れ物も変、妙や! ひょっとしてチカン? 新手のナンパ? けど、気持ち悪いオッチャン。
「オッチャン! 朝から、それも病院で、なにするねん!」
 と、読んでいた本から顔をあげて、瞬間的に、私は大声を発した。
 もうひとりの私が、( ≪ ここでひとつ解説を ≫ 私の心の中に、もうひとりの 天使や悪魔がいて、時と場合によって、私の言動にハッパをかけたり、戒めたりしてくれるんです。
 しゃべり方は、これまた、時代ものやったり、オッサンやったり、任侠やったりと、バラエティ豊かに、様々です )
“ほんなら、ヒルやったらエエのん? 夜やったらエエのん? 病院と違うとこやったら許されるのんかい!”
 と、もうひとりの私が、心の中で叫んだ。
 ほんまや、朝でもヒルでも、場所を問わず、チカンはアカン! もっというと、犯罪やないか! ワイセツ行為やんか!
 病院にまで、チカン行為するヤツが出没か。何たる世の中。



 今、被疑者も被害者も共に、年齢・性別を問わず、周りで ひったくり が大流行している。
 そして、ついに、私も遭遇。
 ある日、車を降りて、某所に向かっていると、そのはじめから、私の歩幅に合わせるようなクツ音。静かな住宅街、ヒル間ですよ。
 ご先祖様は「犬」だったかなア〜,
と思えるくらいに、耳と嗅覚、断トツに優れものの私。
 うしろから来るのは男性、しかも、私の歩幅、歩調に合わせて歩いている‥‥などと、全神経をうしろに集中して、歩く速度も変えず、目的地に向かっていたら、車を降りて、わずか5〜6分かな、私の左側をすり抜けるように、男は早足に急変。
 こちらも緊急態勢モード全開。
 私の左肩に掛けていた綿の書類袋を、ひったくろうとしたその瞬間、間髪を入れず、私は左ひじに、反動をつけ、思いきりその男の、みぞおちへ、力こめて、一撃。ま、ヒジ鉄ですね。
 男、“想定外”の、アクシデントに、
「う‥‥‥‥ッ」
 と、おなかを抱えて、しゃがみかけた。
 この程度で許す、姫(私のことよ)ではない!
 私は左手をグーにして、甲で男の鼻っ柱に、正義の鉄拳を一発お見舞い!
 おなかを左手で、鼻を右手で押さえ、道端に正座の格好で座り込む男。
 なんと、ソイツ、結構お年寄りだった。
「オッチャン! 根性 あるやないか! 相手みてやらんと、エライ目に遭うで!」
“チョ、チョッと。相手によっては、ひったくりしてもエエのんですか、姫? お言葉、セリフ、近ごろ、めちゃくちゃ乱れておりヤス‥‥”
 と、もうひとりの私の心の声。


 段々、ヤクザの“ニイさん”に変身する私。
「もうやめとき、私だったから、この程度で済んだけどサ〜、ひとつ間違うと、コンクリートのクツはかされて、東京湾の底でワカメと一緒に、魚の交通整理させられるんだヨ〜」
 と、まあ、ヘタな東京弁で、説教というか、ヤクザの“ニイさん”よろしく、様々に諭してあげた。
 結論的には、警察も呼ばんと帰してやった。
 しかし、当然、姫(私のことよ)も、単なる説教では終わらない。


「オッチャン、今夜、私に強烈なヒジ鉄と、鼻っ柱へのパンチで受けたキズが痛いやろう。その痛みを抱えて、思い出して、もう、足、洗い。生活に困窮してるんなら、区役所へでも行って、生活保護してもうたらエエネンで。今まで働いてきたんやろ‥‥」
 ここまでは、姫(私のことよ、ヒツコイ!)も、我ながらエエこというなア〜と、我がセリフに 自画自賛。
 しかし、最後のセリフ、
「あんた、このままだったら、近いうちに、刑務所行きダヨ」
 オッチャンは、鼻血ふきながら、私を見上げて、
「刑務所は、やっぱり、つらいですか!?」
 と一言。
 なんで私に訊(き)くねん。私の眼を見ながら、そんなこと、訊かんといて! と思いながらも、面倒みのいい私としては、やっぱりここで、レクチャーしといてやりたいと、
「あかん、年老いて行くとこやない。若いときならなんとかなるけど、年寄りの行くとこやない、とっつあん、あそこは若いとき、行くもんサ〜!」(ここで、鶴田浩二の『傷だらけの人生』なんて曲が入ってくれると、なお盛り上がったんやけどなア〜)
 姫(私のこと‥‥デス)、一言多い!
 年寄りでも若くても、あんなとこに入りたいなどと、なんたる不謹慎な発言。それに、時代劇になってまっせ!
 姫、言動には、充分気をつけて。麻生某と同類になったら、エライことですがな。
 姫! 総選挙では、ワレワレ全国の、貧乏人の仇討ちデスゼ!!










(撮影・幻舟)


 ということで。
 暑くなりました。
 皆さん、体調くずさないように、ネ。

 セミの声、やっと、二日前から、聴こえてきました。