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 生まれたときから大人の世界で育ってきた私は、童謡などというものをほとんど知らない。

 確かに、学齢に達して、旅先で地元の学校にも入れてもらった。それも、興行の都合で3〜4日だったり、2〜3日、わずか1日だったりのところもあった。

 今でも、はっきり覚えていることがある。
 某小学校で、音楽の時間。
 どこか冷ややかな雰囲気の担当の先生が、
「自分の一番好きな歌、唄ってみなさい!」
 と一言。
 しかし、周りの学童たちはシーン。
 誰からも声はない。
「ハイ!」
 と声を上げたのは、役者の子の私だけ。
 担当の先生は、私を直視し、
「ハイ! どうぞ」
 と、いうが早いか、オルガンの前へ!


 椅子から立ち上がって、胸張って、唄い出した私。

♪リンゴ〜の
  花びらが〜
   風〜に
     散ったよナ〜
(美空ひばりさんの『リンゴ追分』)


 教室は、一瞬、白々としたような、先生もオルガンは弾けなく、茫然自失。
 童謡を知らない私としては、舞台で使っている歌が“好きな歌”になるのだ。







 子どもの歌も覚えんと……と、いつの頃やら、誰に教えてもらったのか定かでないが、童謡といわれる子どもの歌を覚えていった。

その歌は、なぜか『お猿のかごや』

 この歌は、そのときどき、気分によってスローバラードや、テンポアップで明るく元気に唄うことができる。
 同じ曲が、哀しい曲や楽しい曲やヤケッパチに唄うことのできる曲だと、ひとりでいるとき気がついた、で、いつのころやら唄っていたようだ。




 旅の行く先々で、いじめや疎外感に心が萎(な)えそうになったときは、小さい声で……ゆっくりと……、
 ♪エッサ エッサ エッサホイ サッサ……


 ヤケッパチに気合を入れるときは、大声で!
 きっと、育つ中で、生きる中で、私なりに身につけたアレンジなのだろう、いや生活のチエの曲なのだろう。



 近年は、
♪エッサ エッサ エッサホイ サッサ〜ア〜
  お猿のかごやだ ホイサッサ〜ア〜
 と、特に語尾を伸ばし、大口開け、どえらい声で唄う。
 私の応援歌というところなのかもしれない。
 今日も、朝から、
♪エッサ エッサ エッサホイ サッサァ〜ア〜
  お猿のかごやだ ホイサッサァ〜ア〜
今年も大声で、
 ♪お猿のかごやだ!
   ホイサッサァ〜ア〜!!




【可愛いおサルさんのイラストは、パステルIT新聞さん・「いらすとや」さんのサイトからお借りしました】