【第一幕】 |
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「 | 姫! 三太夫でございますぞ!」 |
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三太夫か。その方、新年の挨拶にも来ぬのに、今日はどうしたのじゃ?」 |
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姫! よくぞお聞き下された。今日は先代藩主・家三郎様のお命日でございますぞ! 三太夫、家三郎様にお仕えして以来、33年の月日が経ちもうした」 |
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「 |
そうそう、その方、他藩でセクハラ事件を起こし、お役御免になった上、妻子に逃げられたのじゃな。 再就職もままならず、世をはかなんで、大阪・十三(じゅうそう)の淀川大橋(例えば江戸でいうなら荒川大橋)に佇み、エイ! とばかりに橋の欄干をまたごうとしているが、そち、足が欄干に届かず、モタモタしている姿を父上が見て、『コレは身投げじゃ!』と家臣のものに命じ、父上に助けられたと聞いておるぞ」 |
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「 |
姫! それは誤解でございますぞ! 三太夫は、入浴中の腰元をちょっと覗き見し、ピューピューと口笛を吹いただけですぞ! それに、妻子に逃げられたわけではございませぬ! 息子の運動会用の靴がいるからと、妻と息子、二人で買い物に行って帰って来ぬだけでございますぞ!」 |
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「 |
それを世の中では、セクハラというのじゃ。それを家出というのじゃ。 どこの世界に33年もかけて運動靴を買いに行く親子がおるものか。その息子も今では40歳くらいじゃろう。運動会用の靴などいるまい?」 |
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「 |
……そうかなぁ? ところで、姫! 新年にご挨拶に参上出来なかったのには理由がございますぞ。 元旦の日に大変なことが起こりました! 城下で、乗用車と軽トラックが正面衝突して、物凄い音がいたしましたぞ! 元旦だけに、ガンターン! |
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というわけで、姫! 三太夫でございます。 小芝居を演じてから本題に入るのが三太夫の流儀でございますぞ」 |
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「 | 本題?」 |
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桜宮高校生自殺事件について姫のご意見をお聞かせくだされ」 |
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「 |
三太夫、よく聞くがよい! 技や芸というものを体得するには、暴力では決して身につかん。 “叱咤激励”という言葉通り、大声で叱り、励まし、気持ちを奮い立たせる! すなわち、本人にやる気を起こさせる。それが本来の指導というものじゃ〜。 本件、聞くところによれば、指導や体罰などという生やさしいものではない! これは暴行傷害事件じゃ! 警察庁・所轄は、なにをしておるのじゃあ! 暴力や体罰は、軍隊や刑務所にまかせればよい! スポーツは他団や他校との競い合いのため、なんとしても優勝等だけに目がくらみ、本来の指導の目的を忘れた愚か者が、いらついての暴行のくり返し。 体罰などとは、笑止千万。指導ができぬから、体罰と称して暴力をふるう。 決して指導者ではない。 監督や指導者が、優勝や他団を意識して、そのことだけに神経を奪われ、自己が何ゆえ指導しているのかについては頭にはない。まさにアジャパーじゃ! 指導者として一番大切であるはずの団員の、すなわちこれから育つ学生たちそれぞれの個性を、冷静沈着に観察する、教育者として必要欠くべからざる、もっとも大切な役目を忘れたチョー愚か者よ! ま、姫からいうと、このような人間は教育者としての資質が完ぺきに欠けているといえよう。 このような愚か者、百タタキの刑にしてやれ!」 |
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「 |
ハハ……心得ました……ケド、こわい……。 今日もまた、運動靴やセクハラと、時代が行ったり来たりしましたが、こういうのを、女の人が日差しの強い時にさす傘で……ほらパラソル? ア、チゴウタ、ソウヤ、異なる時空、パラレルワールド、てなこといいマンナ。 無駄に饒舌な上に、一人ボケ突っ込みも三太夫流でございますぞ。 しからば、ゴメン」 |
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「 |
コレ、三太夫! コレ! エエい、バタバタと、そちは酉年か? バタバタと、そういうのをバタバタ貧乏というのじゃ! 今年こそ、少しは落ちつけ! よいな!」 |
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【三太夫覚え帖】 平成生まれの姫が、アジャパーや、初代林家三平師匠のギャグをご存じとは驚き申した。 初代三平師匠の芸をご存じない若い方は、こちらをご覧下され。 http://www.youtube.com/watch?v=7j_oSl_qO4Q |
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