花粉の春もぼちぼち“終わり”などと新聞等で報じていますが、人それぞれアレルギー源によって、終わる人もあれば、まだまだ絶頂期の人もいます。私は後者のほう。6月の声を聴くころくらいにならないと、ダメ。そんな先日のこと。 某所をひとり歩いていた。 フッと前方を見るや、オッ、と心の中で叫び声が出るくらいのエエ男が歩いてくるではないか。 長身の細身。深い紺色のスーツに、同系の淡い色のシャツにネクタイ。向こうも歩けばこっちも歩くということは、段々近寄ってくる、当然や。 オッ! どこかしらに影のある私好みの顔立ち。口元凛々(りり)しく、一文字に結び、やや目が鋭く、隙(すき)がない。大股でリズミックに足を運ぶ。 オッ! 映画『アンタッチャブル』のときのケビン・コスナーに似た、私のあこがれの男ではないか! しかし、私も考えた。この歩き方、この目線、ひょっとしたら刑事か? 二人の間が50メートルくらいに近寄った。彼の目線が少しゆるんだ(なんでや? 刑事か?)。疑い深い姫(私のことよ)の心根が憎い。 気を取り直し、私も少し口元をゆるめて微笑むでもなく、怒るでもなく(なんで怒るの?)、ま、早い話が、近ごろすっかり眠り、忘れ果てていた色気フェロモン微笑みを出した。 私を見つめる彼…、目だけで、私に軽く挨拶している(みたい)、エエ男や。 「お出かけですか? もしお時間があったら、お茶でも…」 と言われたら、私どうしよう。私の人生を乱すことになる。それに先を急いでるけれど、いま断ったら、もう二度と、いや一生、こんなチャンスはないかも。 「でも、お仕事が…」 「今日が無理なら、携帯を教えて、ボクの携帯も…」 なんて頑張りはったらどうしよう。携帯持っていないなんて、今どきの人間、言えない。これではフラれるかもしれん。そうや、その時は、事務所のB君の携帯番号言うたろ。 「私の携帯ですが、事務所の者に貸してやっているので、そこでもいいですか…」 「もちろんです。連絡が取れるのなら…」 こういうタイプは押しが強い。 彼の年格好からいったら、結婚しているか、恋人くらいいるだろう…、私は独占欲が強い。だからきっと苦しむ。そして私の情の深さに、彼も苦しみ悩ますことになる。そのため三角関係で血だらけ事件になったらどうしよう。そんな事になったら、私のことをひそかに思いを寄せている全国各地の男たちがどんなに嘆き哀しみ結果、労働意欲を失い、ひいては日本経済にまで大きなダメージを与えることとなる…、想像力というのか、空想力のたくましい私の特徴としては、あっという間に頭の中は大パニック。 私と彼がすれ違うには、あと三歩か四歩。運命のその瞬間。 私の鼻から水ッパナが音もなく、タラ〜ッと垂れた! なんたる悲劇、まさに驚天動地! 敏捷(びんしょう)な私は、瞬時に手でおさえたけれど、時すでに遅し、明らかに彼の目に見えてしまった私のハナタレ! 彼は私から目線をそらし、私の後ろに靴音を残し去って行った。 なんたる失恋! 久しぶりのチャンスを、花粉症のハナタレのために、またもや見送りの、三振か! 花粉症のハナタレは、経験者にはわかると思うのですが、予告もなく、いきなりタラ〜リなのです。単に水道の水が蛇口から流れるように。 今年もやっぱり淋しい春でした。 <近況でした> |
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< 撮 影・幻 舟 > | |||
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正しくは、 「ここで犬におしっこをさせないでください、 迷惑しているんです」 でしょうネ。 法律的に厳しくいうと、もし度々犬の排尿な どにより、塀や花壇等を異臭や損傷、度重なる 排尿により塀が腐食し器物損壊といった実害が 生じた場合、犬の飼い主に損害賠償請求ができ ます。 |
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この立て看板を発見した瞬間、一緒に歩いていたS編集者氏、 「これ、変ですネ?」 「どこが?」 「な〜んか、エッチッポイ…」 「なんで? Sさん、あなたがエッチですよ!」 でもそういえば…、そうか? なあ…。 エッチですか…?? |
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< 撮 影・幻 舟 > |