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本日、私たちは、堅い絆(きずな)をもって『自操連』を結成したことを、世界に向かってほがらかに宣言する。 |
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自操連は、創作舞踊家の花柳幻舟を永世総裁に、フリーライターの水平線世之介を副総裁に、日々追いつめられる印刷業界にあって凛(りん)とした姿勢を貫く木戸光を最高顧問に、フリーターの中森秋彦を事務長とする四名の役員で構成、運営される。 |
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「自転車操業」とは、たとえていえば、自転車のペダルを懸命に漕(こ)ぎつづける<働く>ことで日々の暮らしを支え 前に進む<生活する>という、やや揶揄(やゆ)された慣用語である。
しかし、今日の社会状況を見渡してみるとき、日々まっとうに生きる人間なら、その多くが自転車操業的生活とならざるをえない。
長期独裁政権による経済の破綻(はたん)、不況に端を発した社会福祉の切り捨て、強者優先の市場経済システム。混沌(こんとん)とした社会で、人間としての意地と誇りを失わず、ごくまっとうに生きつづけようとする限り、“自転車操業”を余儀なくされるのは、現代にあっては当然の理である。いいかえれば、“自転車操業”で生きているものこそが、自己を失うことなく気高く生きる真の人間であるといえよう。
私たち自操連は、自己を見すえ、自尊心を捨てず、誇り高く未来に向かって歩(あゆ)もうとするものたちの集まりである。 |
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よって、本会の入会資格は、情熱とプライドをもって真剣に自転車操業生活を送っているもの。従って、年令・性別・国籍・人種・民族・思想信条等々の違いは問わない。ただ前記創立者四名の資格審査を経て、合格することを要件とする。 |
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ここで副総裁が身をもって体験した、実に象徴的ともいえる事象を付記しておきたい。
さかのぼること数日前の四月某日。風速十五メートルはあろうかという猛風の中、副総裁は大事な所用で、愛車の中古自転車のペダルを身体を二つ折りにして狂おしく漕いでいた。歯を食いしばり、運動不足と栄養不足で逆走しそうになる力学に懸命に反逆し、くじけそうな心を鬼の形相に変え、ほとんどケイレン寸前なまで両腿(もも)の筋肉が引きつれるのに耐(た)え、どうにか目的地にたどり着いた。だが、このときに味わった苦闘と達成感こそがまさに自操連そのものの姿だった。
ペダルをどうであっても漕ぐのをやめてはならない。すなわち漕ぎつづけることこそが我が暮らし、自転車を漕ぐことをやめたとき我が人生も終る。けれども、ときにはペースダウンもよいことで、なんとか日々漕ぎつづけてさえいれば、喜怒哀楽ひき連れて明日の希望も生活も見えてくるのだと、身をもって悟ったのであった。 |
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私たちは、愚劣(ぐれつ)な風潮にひるまず、屈せず、しごくまっとうな人間こそが持ちうる意地と誇りと夢と栄光が、健全なグローバルスタンダードとして世界の常識になるよう、活動の第一歩として本日ここに、自操連の設立を宣言する。(二、三改正あり) |
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2004年5月1日 |
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永世総裁・創作舞踊家 |
花柳幻舟 |
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副 総 裁・フリーライター |
水平線世之介 |
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最高顧問・印刷業 |
木戸 光 |
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事務長・フリーター |
中森秋彦 |
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