姫 三太夫でござりまするぞ!

【第八幕】










 この物語は、事実に基づき(?)ながらも、大胆かつ壮大に時空を超えた歴史ワールドなのである。
 笑い、時には怒り、また時には涙なくしては読めぬという空前絶後、絶体絶命、以心伝心のパラレル・ショートストーリーともいえる!
   登場人物
    姫 
(幻舟)
   三太夫
(パラワー人)



姫! 三太夫でござりますぞ! おや? 今日は何をお読みで? 姫は読書家でございますなぁ」

ふむ、三太夫か。今日は『ゲバラ日記』を読んでおるぞ」

ほう! 姫も変わった御趣味をお持ちで。下痢腹の日記?」


こりゃ! 何をどう取り違えたらそのように聞こえるのじゃ? 頭の中に蜘蛛の巣でも張っておるのか? まぁよい、いつものことじゃ。三太夫は知りもすまいが、ゲバラとは世界的に有名なキューバの革命家じゃ!」


ほほぅ。つまり、なんでございますな。そのご仁は、タンスやテーブルなどを作る名人で、世界的に有名なんで。しかし、キューバにも立派な職人がいるのでございますなぁ」


なんじゃ? それは?」


世界的に有名な家具メーカー」


アホ! 姫が言うは、カクメイカ! 三太夫のは、カグメーカー! もうよい。もうよい。さがれ。さがれ」


いや、姫! 今日は姫に質問がござりまして。どのようにしたら姫のように読書家になれるのやら。三太夫は前から不思議に思うておりました。三太夫などは2〜3ページも読めばすぐに眠気が襲ってまいりますぞ。本を1冊読むのに半年はかかりまする! 姫! 読書家になれる秘伝を教えてくださりませ!」

まず、三太夫の問いに答えてとらす。
 どのような本でも、乱読したのでは楽しくない。しかし、その本を面白いとか、心に染み入るようなものを、一冊の本の中から、たとえ一行でも見いだせば、きっとその本が読んでいる人間のなんらかのために残ろう。
 学問と同じじゃ。面白くなければ続きはせぬ。
 姫も、学校の先生によっていじめに遭い、そのために学ぶ喜びまでには至らなかった。
 当時の姫は幼く、無知で、ま、美しさは変わらぬがのう……。
 いま思えば、大人たちの打算や、心の闇も見抜けぬ姫が幼いゆえにのう。実に残念じゃ。
 読書も同じじゃ。学ぶということものう。
 まずその学問に魅力を感じること。早いこといえば、学ぶことの喜び、三太夫がいつも女子(おなご)たちに持つワクワク感かのう……。面白くなると、寝るのも忘れて、本など読みふけていたりするゾ。

 それから、「ゲバラ」という人の話じゃがのう、
 彼は、キューバという国で、人民革命を成し遂げた人なのじゃ。
 ニホン国でも「明治維新革命」などという御仁もいる。 立派なスローガンをかかげ、市井の人々を困窮と命の恐怖に追いやり、明治維新を成し遂げた。
 立派な主義主張を唱えていた徳川組も、天皇組も共に、明治維新後、いわゆる「テクノラート」といわれる行政官、高級官僚の権力の座にすわる、ま、こんなのを「革命」というのじゃから、姫などは呆れて、腹がへるのう。
 結果、単に権力が欲しかったための戦(いくさ)だったということかのう。
 ゲバラは、仲間である人々と革命を成し遂げた後、権力の座を求めることもなく、キューバから立ち去り、貧困と格差社会に弾圧される人々のため、生涯闘い続けた革命家じゃ。
 彼の革命には、きまって識字教育を一番にして、同時に、医療に力を注いでいたこと、それが今日のキューバ革命を勝利に導いたといえよう。
 革命後、権力の座にすわるカストロより、はるかに人間としての品格のあるチェ・ゲバラを、姫は敬愛を禁じえない。
 1967年、アメリカ“CIA”の回し者により、ゲバラは惨殺された。
 権力の座でご馳走を食べ、高級な衣服を着て、高収入を得ているような“テクノラート”といわれる、維新革命に生き残った人間たち、それらの三代目、四代目の政治家は、今もご先祖様同様、あぐらをかいて座している。
 飲まず食わずで惨殺されたゲバラの最期のすさまじい生涯のほうが、姫は、真の革命家と思う、そして正義を求めて生きた人間であろう。
 三太夫、少しはわかってくれたかのう〜」
☆     ☆     ☆     ☆

三太夫覚え帖
 そうかぁ。ゲバラとはそのようなご仁であったか。しかも姫のお気に入りとは。「ゲバラ焼き肉のたれ」なんぞとボケたら懐剣で突き刺されていたやもしれん。
 よし! 一念発起して、拙者もゲバラに負けぬように今日から『三太夫の日記』を書こう! 今日のテーマは私が選んだHYH48のベストテンか。花柳藩の腰元は美人揃いじゃからベストテンを選ぶのも難儀じゃな。徹夜かな? 今夜は。

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