【第六幕】 |
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「 | 姫! 三太夫でござりますぞ!」 |
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なんじゃ、三太夫。また くだらぬギャグでも思いついたのか?」 |
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姫! 三太夫は周りの者のレベルを考えて、わざと低レベルのダジャレを言っておるだけでござりますぞ。本当は高尚な言葉遊びが三太夫の真骨頂でござります!」 |
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「 |
それは初耳であるな? 周りの者の方が三太夫よりレベルが高いと思うがな。 で、高尚な言葉遊びとはどんなものじゃ?」 |
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たとえば謎かけでござりまするぞ! 本来、謎かけとは一つの言葉に二つの意味を持たせますのでございます。一つご披露いたしますぞ。 『お葬式とかけてウグイスととく』」 |
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「 |
ほう、面白そうじゃな。して、そのこころは?」 |
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「 |
『なきなき うめに行く』でござりますぞ! お葬式は、泣き泣き 埋めに行く。ウグイスは、鳴き鳴き 梅に行く。ふふふ、いかがで?」 |
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「 | ほう! 三太夫。その方、今日は学者じゃのう。他にはないか?」 |
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「 |
しからば。『お坊さんとかけて朝刊と読む』では如何?」 |
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「 |
ふむ? そのこころは?」 |
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「 | ふふ。『けさきて きょう読む』でございますぞ。お坊さんは、袈裟着て経 読む。朝刊は、今朝 来て今日 読む。ふぉっふぉっふぉ。いかがでございますかな?」 |
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「 | 三太夫、今日は珍しく面白かったな。が、そのネタは、何十年も前……いや、姫はまだ若いゆえ、直接に聴いたわけではないが、乳母が申しておった。テレビ番組の中で立川談志師匠が披露しておったであろう。 ところで三太夫、かめのことじゃがのう〜」 |
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「 | かめ、カメ……?」 |
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「 | かめ、腰元のお亀のことじゃ。亀が、近ごろ少し太ったように、姫には見え、もしやと思い、亀に訊いてみた。やはり、姫の想像通り、亀は懐妊しておった。 姫が相手の男(おのこ)の名をいえと、どう問いただしても、相手の名をいわん。 フッと思い浮かんだのは、三太夫、そちじゃ。 そちは女子(おなご)に甘え上手。女心を知り尽くしておる。しかし、妻子に逃げられたがのう……。いや、そのことがかえって女子の心を揺さぶると……な、そうであろう。亀のお腹の中の児は、そちの児か? ありていに申せ。姫は心の広い人間じゃ〜。人には間違いもあろう。 三太夫、生まれてくる子には罪はない。まず、子どもを認知してやるのじゃ。亀は何もいわんが、認知を望んでいるのであろう。 それから、子どもが生まれたら、養育権というのも発生するぞえ。近ごろは裁判で闘っても、女親のほうが養育権を勝ち取った判例が多いようじゃ。しかし、養育しなくてもよいとなっても、養育費を出すことになるのじゃぞえ。 とにかく、大きな覚悟が必要じゃのう。 三太夫、金子(きんす)はあるのか?」 |
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「 | いや、姫! いや、いや、それは・・・。姫! 拙者は確かにオナゴ好きではございますが、三太夫の○○○は、もうすでにお役に立ち申しません!」 |
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「 | 三太夫! 真っ正直に申せ!」 |
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「 | そ、そ……そんな……、いや、いや、まさか……いや、もしや……姫! 亀の、お腹の子の父親は三太夫かもしれませぬ! あれは10日ほど前のことでござります。廊下で亀とすれ違いざまについムラムラと……。亀のお尻を触りました! ……そうかぁ、あの時の……」 |
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「 | あほ! 小学校の保健体育からやり直せ! そんなことで赤子が生まれるか! ネズミでも出産までに20日間はかかるぞ! ええい! 愚か者め!」 |
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☆ ☆ ☆ ☆ |
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【三太夫覚え帖】 いやぁ、ドギマギいたしましたなぁ。姫に詰問されオロオロしてしまいましたわ。あのあと、お亀を呼んで事情を聞いたところ、なんとお腹が膨れているのは芋の食べすぎとか。姫に聞かれて、まさか芋の食べ過ぎともいえず「お腹が……」と言ったところを姫の早トチリ。お亀もお咎(とが)めなしで丸く収まったものの、おかげで三太夫の○○○は役立たずと城内に知れ渡る羽目に……トホホ。 |
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