【第九幕】 |
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「 | 姫! 三太夫でござりますぞ!」 |
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「 | おお、三太夫か。ちょうど良い時に来たな」 |
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「 | ほぉ。おまんじゅうか何かいただけるので?」 |
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「 |
そうではない。今日は三太夫の存念を聴きとうて。ちょうど良いところに来た。三太夫。 その方、巷(ちまた)で聞くところによると、花柳藩の腰元たちでHYH48を結成したとか。そうそう、『ハナ・ヤギ・ハン48』。『華やぎ班48」ともいうがな。 ♪ 逢いたかった〜 逢いたかった〜 逢いたかった〜♪、あれのパロディーかのう。最近、評判のグループじゃ。姫ほどではないが、花柳藩の腰元たちは美人揃いじゃからな。 そのHKH48のアンケートで『抱かれたくない男NO.1』に三太夫、その方がダントツで選ばれたぞ。 それから城下の町人たちのアンケートの結果でもな、『花柳藩から出ていってほしい人』にも二位を大きく引き離して三太夫、その方が1位じゃ。あと、城内の役人による投票結果もあるぞ。『こんな上司は消えて欲しい』で、ぶっちぎりの1位が三太夫、やっぱりその方じゃ。 三太夫、その方は人望のない部門の三冠王じゃ! |
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「 |
ほう! 三冠王! てっ、てっ、照れるなぁ!」 |
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「 |
アホ! どのような思考回路じゃ。褒めてなぞおらぬのじゃ。三太夫は、今は亡き父君のご厚情で花柳藩の家老になったが、ここまで世間の評判が悪ければ姫も哀しいゾ」 |
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「 |
お給金を上げていただけるので?」 |
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「 |
姫の話を聞いておるか? 脳の中に新種のウィルスが耳の穴から入り込んだのか? 姫からみれば、三太夫はウィットにとんだ、少々オッチョコチョイではあるがオモロイ男の子(おのこ)と思うがのう」 |
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「 |
姫! あり……がたき……お言葉。う、う、う……泪が、泪が……ちょっとハナかみます、お待ちを。(チーン) しかし、この三太夫、いままでの人生の中で『さわやかな奴』とか『頼りになる人』と言われたことがござりませぬ。姫!どのようにすれば姫のように人から頼りにされるので? ぜひ、ご教示願いまする!」 |
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「 | そうじゃのう〜、人から頼りにされる……なかなか難しい話じゃのう。人間は、助けてもらうばかりではない、“助けられたり助けたり”この基本を心に生きて行きさえすれば、他者は信頼し……。 また利己主義では、人間としての品格も上がりはせん。 世の中の多くの事件は、見て見ぬふりをすることで起きておる。 他者の問題には関わりあいたくないと、目をそむける……これが一番の卑怯者というのか、人間としての大罪であろう。 ま、この点を心に、我が道を人間として真っ直ぐに、信念を持って生き抜くこと。 他者に自分のエエとこを見せようとか、おしつけがましいおせっかいでなく、人はひとりでこの世に存在しているのではないのじゃと心に念じ、すべて“持ちつ持たれつ”で生きることかのう。 三太夫、そちは人間としての品格を心に持っておる。女子(おなご)に“キャ〜、三ちゃん〜、好きよ! 可愛い!”なんて上っ面の人気はなくとも、三太夫の心根を知る者は、そちの良さをよく知っておる。 いや、誤解をするでないぞ、といっても、三太夫と姫とが、結婚!……これはパスじゃ! 姫はパスじゃからのう!」 |
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【三太夫覚え帖】 なるほど。助けられたり、助けたりかぁ。持ちつ、持たれつかぁ。 姫のお話はいつもタメになるなぁ。 ところどころ意味のわからぬところもあるが……、血痕とか、なんとか……。今、流行りの映画『なぞ解きは晩ご飯の後で』のことか? しかし、姫は三太夫のことを少々みくびっておられるぞ。 これでも部下の評判は上々なのじゃがな。 先日、廊下を歩いていたらふすま越しに部下の話声がしたので立ち止まって聞いたおったらこんなことを言っておったな。 「やれやれ。姫に言いつかった仕事をご家老は何もせず、いつもわしらに丸投げじゃのう。もしオリンピックの柔道で、丸投げという技が認められたら、うちのご家老は金メダル間違いなしじゃ」 ふふふ。金メダリストかぁ。今度、姫に自慢してやろうっと。 |
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