![]() 【第十三幕】 |
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「 | 姫! 三太夫でござりますぞ!」 |
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「 | 三太夫か。ちょうど良いところに来た。今、そなたのことを考えておったところじゃ」 |
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「 | ほう! 平成生まれの姫も、ようやく大人の男の魅力に目覚められたので」 |
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あほ! 三太夫のどこに大人の魅力があるというのじゃ! 確かにアホらしいくらい陽気なおのこじゃ。 姫の読者には真面目な方が多くてな。『“チャバレー・ハナヤギ”というのはキャバレーの間違いではございませんか?』というような質問が来ることもある。 三太夫がおふざけでチャバレーと言っておると、姫には分かるのじゃがな。真面目なお方にはそれが間違いと映るのじゃ。 他にもあるぞ。『意味が通じない』とか、『品位が下がる』というのもあったな。 父上に召し抱えられ、いまや城代家老とはいえ、こうも評判が悪いとのう、三太夫の扱いに姫も頭が痛いのじゃ」 |
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「 |
ほほー。するとなんでござりまするな。『三太夫のギャグに大笑いした』とか『三ちゃん、大好き』という圧倒的な人気の中でも、そういう少数意見があるという事でござりますな」 |
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「 |
人の話を聞けい! だれがそんなことを言うたか! どこまでも前向きなおのこじゃ、そなたは! しかし姫は、そのノーテンキのところが気に入っておるがのう」 |
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「 |
これでも一部の識者の間では好評と聞いておるのでござりまするがな?」 |
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「 |
一部の識者とは誰のことじゃ? そんな奇特なお方がどこにいるのじゃ?」 |
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「 | 姫! そんなことより質問がござりまするぞ! 最近、ヘイトスピーチという言葉をよく聞くのでござりまするが、これはなんのことで? 人間が、塀とスピーチなどできるものでござりましょうか? 姫のご解説を賜りたく」 |
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「 | 質問で、はぐらかすのも三太夫の悪い癖じゃ。まぁ、しかし折角の質問じゃ。答えてつかわそう。 “ヘイトスピーチ”とは、このところ急にニュースになっている言葉じゃのう。訳すと、『憎悪表現』という。 意味は、特定の個人や集団、団体などの人種、宗教、民族的な文化などを差別的な意図をもって卑しめ、貶(おとし)める、悪意をもっての言動をいう。 単に、『おまえのカアちゃんデベソ!』などと、子どもたちが言う悪口とは根本的にレベルが違うのが、“ヘイトスピーチ”という言動なのじゃ。他者を卑しめる言動などをして、なにが面白いのか、許せんのう。 ずっと昔、“ヘイトクライム”という言葉があった。 いや、今日も世界で生きている。 それは、人種偏見を含む、白人優位主義にもとづく犯罪行動をいうものじゃ。恐ろしい話じゃのう。 いまだに世界では、この問題で地方自治体などでは“ヘイトクライム”を禁止する条例が多く成立しているそうな。それに反対する保守派もいたりして、人種偏見差別による暴力、犯罪は続いているのじゃ、悲しいのう。 “ヘイトスピーチ”も危険きわまりない言動じゃ。若者は、面白おかしく、お祭り騒ぎの雰囲気で集まっているが、大変危険な言動、すなわち犯罪行為につながる。 刑務所の5メートルにも及ぶヘイの外から、中に収容されている恋人に声をかけ、それに気づいた収容者の恋人と話をする、早い話が、『塀をはさんで話しをする』なあんていう、なまやさしい話(この話は切ないがのう)ではないのじゃ」 |
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【三太夫覚え帖】 姫は変なことをおっしゃっていたな。「ぞうおひょうげん」? 塀とスピーチで象を表現? なんのこっちゃ? 姫の話をエエ加減に聞いてしまったな、今日は。要するに「アホて言うたもんがアホや」ということであろう。人の悪口を言うなということじゃな。人の振り見てわがふり直せか。 それと刑務所の話もあったな。あの高い塀を挟んで収容者と恋人が話をするのか。お互いに顔も見えないし、ひそひそ話もしにくかろうに。そこまでして話がしたいものであろうか? 浅ましいものじゃ。そこへ行くとチャバレー・ハナヤギのみっちゃんと三太夫はテーブルをはさんでいるだけであるからな、こっちのほうは刑務所に比べればはるかに脈があるぞ。今日も下城したらみっちゃんに会いに行こう。 |
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