姫 三太夫でござりまするぞ!

【第十七幕】










 
この物語は、事実に基づき(?)ながらも、大胆かつ壮大に時空を超えた歴史ワールドなのである。
 笑い、時には怒り、また時には涙なくしては読めぬという空前絶後、絶体絶命、以心伝心のパラレル・ショートストーリーともいえる!
   登場人物
    
 (幻舟)
   
三太夫(パラワー人)



姫! 三太夫でござりますぞ!」

誰?」

誰って、三太夫でござりま……」

どちらの?」

花柳藩の……そのお……」

そのような者、おったかのう〜」

そんな……、いや、確かにご無沙汰でござりまするが……ま、そのお……。
 姫! その初めて会った人を見るような目つきで三太夫を見ないで……ほら、先代の殿に命を助けていた……三太夫……城代家老の……」


三太夫か、ああ、やっと思い出した。なんじゃ、久方ぶりの登場じゃな〜。どこに隠れていたのじゃ」

姫! 三太夫は花柳藩勤続30年を表彰され、リフレッシュ休暇2カ月を頂戴しておりましたぞ!」


三太夫がサボってる間にたくさんメールやお便りがきたぞ。『やっと、姫! 三太夫コーナーは終わりましたか』『この日を待ち望んでました』とか『花柳藩はこれで安泰』とか、そんな内容のメールばかりじゃがな。ホッホッホ、ウソじゃあ、ウソじゃあ」


ほう、三太夫がいないと読者の皆様はそんなに淋しいので?」


アホ! そんな読者メールは一つもないわ。そもそも、こんなに長い間どこで遊んでおったのじゃ? ま、それでもというか、当然のことであるがというべきか、花柳藩の仕事は順調に進んでおるがな。家臣のものが言うておったぞ。『城代家老が不在であれば、こんなにも仕事がはかどるものか』とな。ホッホッホ、ウソじゃあ、ウソじゃあ、そちがおらんと、姫が淋しいのじゃ」


姫! う、う、う……」

コラ! どさくさまぎれに姫の手を握るでない!」


それは……ハッハッハ……。三太夫が常日頃から部下を教育しておったからでございまするぞ! これで三太夫が藩に帰ってきたら、ますます仕事がはかどるというものでございまするぞ!」

いやいや、そうではあるまい。三太夫、この2カ月、何をしておった。旅行か? 自己研鑚か?」

姫! 三太夫は毎日ゴロゴロしておりましたぞ!」

せっかくの長期休暇を何もせずにゴロゴロしておったのか? もったいない話ではないか、それは」

姫! 三太夫は毎日ゴロゴロしながらニッポン国の行く末を案じておりましたぞ! ニッポン国に未来はあるのかと。ニッポン国の若者は大きな負債を背負わされておりまするぞ! 国債発行残高はゆうに1000兆円を超え、1000億円ではござらぬ、一千兆円でござりまするぞ。新聞や牛乳配達のアルバイトをしてもとても返せぬ金額でござる。年金制度は崩壊し保険制度など社会保障はすべてほころびが出てきているのにそのツケはすべて、何の責任もない若者世代に押し付けておりますぞ! 挙句の果てに放射能を世界中にまき散らしているのに誰も責任を取らないし問題解決への道筋さえも見えぬのが現状でございまする! 姫! どうすればニッポン国の若者に夢と希望を与えられるので? 姫のご見解をお聞かせくださいませ!」

三太夫! 勉強したのう〜。しかし、今やもう遅い! 遅すぎじゃ〜。
 昔、こんな歌があったのう。
♪遅かったのね〜
♪カオルちゃん遅くなってゴメンネ〜
 てなことは横においといて、と。
 謝ってすむ、そんなチッポケな問題やない! ニッポンは借金の海に沈もうというのに……。
 責任者、出てこい! 姫の名刀で!! いや、刃がけがれるのう〜、と言いたい思いじゃあ〜。
 憲法でもうたっておる。
 憲法第13条
『個人の尊重、生命・自由・幸福追求の権利の尊重』
 この第13条は、真に実行されているのか?
 真に実行されていないから、現在のニッポン国中で、言葉を失うような殺伐とした事件が、日々続発しているのじゃ〜。
 この現実をみるにつけ、若者たちに、夢や希望を持て、というのは無理なこと。
 また高齢者たちも、国家のため、国の市場経済のため、身をすり減(へ)らして働き、高額な税金を納め、年老いた時のためと、厚生年金等々も納めてきた。
 しかし、その血のにじむようなお金は行方不明……!! なんたる無責任な国家であろうか。深い落胆も当然じゃ。ヤケを起こすのも当然と、姫でも思うがのう。
 いや、人生に、社会に、政治にあきれ返り、みんな、見て見ぬふりをしてしまう、いわゆる“シラケル”というのかのう。
 心理学的にいうと、『傍観者心理』とでもいうのかのう。
 他者が目の前で苦難に襲われていても手出ししない、誰かがやるだろうとか、関わりたくないとか。
 そのために人間関係も希薄になる一方。冷ややかな他者の間に生きていると、なお夢も希望も湧いては来んのじゃ〜。
 近ごろ、巷(ちまた)で“オレオレ詐欺”たらの事案を聴くにつけ、まさに現代の世の中の映し鏡であると思う。
 日ごろからの関わりがないゆえに、親は我が子の声さえ聴き違う。また親も、めったに電話などかかって来ない我が子に、親としての見栄や情を示そうと、冷静に考えるという思考もなく、大金を言われるままに吐き出す。
 これも、今日の夢も希望もなくなった世の中の現象であろう。
 三太夫、ニッポンという国の未来は暗たんたるものぞ。そちも相当な覚悟が必要であるゾ」

☆     ☆     ☆     ☆


三太夫覚え帖
「なるほどのう……。姫のご説明には。いつもながら感心いたしますな。それに、常に法律をもとに解説くださる。しかもじゃ、人間の法だけでなく天の法にも則っておられるからな。感心至極じゃ。
 ま、しかし少し分かりにくいところもあったな。『ボウカン……シン……リガク』とは? ははぁ。きっと『防寒尻学』じゃな。たぶん、寒くなるとお尻が冷えて体に悪いとかいうものか。科学が進むといろんな学問が出来るもんじゃな。また一つ、勉強になったわ。
 それにしても、2ヶ月間の長期休暇中は毎日、花柳会館でパチンコをしていたとは姫には言い出せなんだのう。『CR海物語』『CRルパン三世』『CR忍者ハットリくん』『CRぱちんこキン肉マン』片っ端からどんな台でも朝から晩まで打ちまくったな。退職金の前借りも随分つぎ込んでしまったがな、やめられんわ。これがギャンブル依存症というものか。こんど姫に依存症脱却法を聞かねば」

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