【第十九幕】 |
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「 | こりゃ、小姓の蘭丸、何を旅支度しておる? この三太夫に断りもなく。なに? 実家の母上が病気で見舞いに行くとな。で、母上の病気のことをを姫に言い出せずクヨクヨ悩んでおったら姫に声をかけられたというのか。で、姫がそちの健気(けなげ)な立ち居振る舞いを見て、そちの顔を姫の胸で抱きしめ、帰宅を許されたというのか? ほう! Dカップであったとな。……ふふふ」 |
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「 | 姫! 三太夫でござりまするぞ! 姫! 三太夫は今、悩んでおりまする!姫の胸で、三太夫の悩みを包み込んで下さりませ!」 バッチコーン!!!! |
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「 | ひゃめ! ひゃん太夫でごらりまするぞ!」 |
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「 | なんじゃ、三太夫。ほっぺたに大きな絆創膏を貼って。ああ、この前の、バッチコーンか。その方がいやらしい顔をして姫に迫ってくるものでな。姫も思わず手が出てしもうたわ。そちを殴ったことを反省しておるぞ、姫も。手ではなく、鉄扇でブチかますべきであった。 三太夫! よぉく聞け。姫はな、本気で悩んでいるものがいたら全力で守るがな、下心のある者には容赦はせぬぞ!」 |
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「 | 姫! 三太夫は不思議に思いまするぞ! 蘭丸の頭も三太夫の頭も、同じ頭でござりまするぞ! どちらの頭を姫の胸に抱いても同じではござりましょう! 姫! 同情と嫌悪の境目はどこにございましょう! 親愛の情とセクハラとの境目はいかに判断するのでございましょうや! いやいや、好きとはなんぞや? 嫌いとは何ぞや? いやいや、愛とは何ぞや? 憎しみとはなんぞや? 教えて下さりませ!」 |
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「 | 不気味なことを……三太夫。やはり、そなた、キツネかタヌキでも憑(つ)いた? 三太夫がいうと、当たり前の話でも『不気味』に聞こえてしまう。 よし分かった、姫が答えてとらす。三太夫、よく聞け。 そもそも、エロい下心をもって肩をなにげに掴むのと、“心底”案じて肩に触れるのとは、根本が違う。 どさくさにまぎれて『抱きつく』のと、親愛の情をこめて抱擁を交わすのでは、その前提が違うのじゃ。 その前提とは? 人間と人間、一方的に『抱きつかれ』ても、それは受け入れがたきもの、痴漢行為ともなる。 前提となる、互いの信頼関係が構築されていてこそ、激励や励ましの言葉や、今日の言葉でいうところの≪ハグ≫も通じるがのう。姫もエロオヤジの、それも……いや、三太夫のことではないぞ。一般的な話でのう。 男にしても女にしても、日ごろからの関わり、関係性の問題であろう。 関係性は構築されていないわ、嫌われているわ、となると、それはどうみてもエロオヤジのエロ行為や、セクハラと感じるであろう。 ず〜っと前、次のようなことがあった。 常に軽口を叩く男がいて、いつもの通り、 「今日は機嫌悪いですが、生理不順でっか?」 てなことを発言して、『セクハラ」で訴えられた。 その男いわく、 「いつも、こんな話をしてきて、誰にも怒られたことないし、『もう〜』といいながら、ドッと座が盛り上がり笑っただけ。それなのに、なんでセクハラに……?」 と、怪訝(けげん)な言葉を繰り返しておった。 この男のような、ドサクサまぎれに、エグい言動を繰り返し、女のほうも我慢してきたが、それはもう通らん。我慢の限界を超えてしまったのじゃなあ〜。 これまでは男社会で、男優先であったが、それがまかり通ると思っていたら、今ではえらいことになるぞ。 三太夫、関係性の問題じゃ。 いま一度、関係性について、深く考えてみるのじゃ。さすれば、そちの疑問も解(と)けようというもの。関係性じゃぞ、よいな。分からんか?」 |
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【三太夫覚え帖】 「なるほど……そうかぁ……『カンケェセイ』……かぁ。 カンケェセイ? ま、それはともかく、人前で生理不順とかを女性に言うのは良くないのは三太夫でも分かり申すぞ。そんな言葉で女性をからかうなど、男としては下の下でありますぞ! サイテェー! 三太夫はそんなことを言わないのに、よく婦女子から『サイテェー』と言われるのはなぜであろうか? それにしても、『カァンケェセェ』? 愛とか憎しみとかと関係があるのであろうかな? そういえば、マザーテレサが『愛の対極にある言葉は憎しみではありません。愛の対極にあるのは無関心です』と言ったとか……、クァンケェセェ? ところで姫がDカップとはな……。着痩せするタイプかな。なんとかしてあの胸に抱きしめてもらいたいもんじゃ。 で、キャキャンセェ? 姫はいったい何を深く考えよと言われたのじゃったかな? キョンキョンセー? うーむ……。 『関係性』で大爆笑のボケかましをしようと思ったが、何も思い浮かばんわい。 お肌のシワシワは増えていくのに、脳味噌はツルツルになる一方じゃ。 トホホ。」 |
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