![]() 【第二十一幕】 |
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「 | 姫! 三太夫でござりますぞ!」 |
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「 | 三太夫か? また暇つぶしに登城したのか? 姫の執政の邪魔をするのではない。用がなければ早々に立ち去れい」 |
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「 | 姫! 三太夫は常日頃から姫の藩経営の見事さに感服いたしておりまするぞ! それに比べて日本国など大赤字。千兆円という大きな借金を抱えているのに、まだまだ借金を重ねておりまするぞ。国民の血税は既得権者ががっちり握っており、官僚の思うがまま。政治家など自民党も野党もピィピィとスローガンを叫ぶだけ。まったくの無能力者の集まりでござりまする。千兆円などと言う借金をどうして返すのか、議論さえ真っ当に出来ないテイタラクでございまするぞ! 千兆円など、国民全員が牛乳配達のアルバイトをしても返せる額ではありませぬぞ。……そのまえに、そんなに牛乳を飲む人がいるのでございましょうか?」 |
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「 | 三太夫、毎日そんなに牛乳を飲む人がいるかどうかという質問への解答は別にしてじゃな、借金は返さねばならぬ。いや、その前に借金をしてはならぬのじゃ。花柳藩が無借金経営を続けており、たとえ飢饉が来たとしてもじゃ、数年分の食料の貯えがあるというのも、常日頃から無駄なお金を使わぬからじゃ。質素倹約をしているからじゃ。三太夫は家老として、ちゃんと質素な生活をしておるか?」 |
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「 | 姫! 三太夫は質素の家元でござりまするぞ! たとえばでござりますな、歯磨き粉ですがな。使っていて、最後の方になればチューブから歯磨きが出てこないでありましょう。それを三太夫はチューブの下から順番に巻いていき、最後まで使い切りまするぞ。巻いていったら元に戻らぬように途中を洗濯バサミで止めておけば便利でございまするぞ!」 |
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「 | ふむ。それで? チューブを最後まで巻いて、使い切った後はどうするのじゃ?」 |
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「 | ほよ? 使い切ったあと? それはもうゴミ箱にすてるので」 |
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「 | なんと! 三太夫! なんという大胆なことを! 三太夫! その方は、そんな古代ローマの王侯貴族のようなぜいたくな暮らしをしておるのか!」 |
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「 | へ? 姫! 使い切ったのでござりまするぞ……」 |
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「 |
三太夫。それは非常に浅はかな認識じゃ。チューブを最後まで巻いていって歯磨き粉が出なくなったらな、チュウブの上から4分の1くらいのところをハサミで切るのじゃ。そして下の方も3、4枚に切り分けるのじゃ。チューブのなかにはまだ20回や30回は歯磨きができる程の量が残っておるぞ。三太夫がそんな浪費家とは知らなんだ。姫は落胆したぞ」 |
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「 |
姫! 三太夫は贅沢三昧の生活をしておりました! 恥じ入る次第でございまする! 花柳藩の蔵には食料も小判もうなるほどあるというのに、どうすれば姫のように質素な生活が出来るのでございましょう。ぜひ教えてくださいませ!」 |
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「 |
三太夫、質素や倹約というものは、他者に強(し)いるものではない。常ひごろから、自己の心の中に問いかけ、居住まいを正し、日々を送ることなのじゃ。 他人の目を気にし、他人に見栄を張る、近ごろはこれらの人々が増えておる。すなわち、人としての“恥意識”が希薄になっているのであろう。 見栄を張って、自己の個性をおざなりに生きたところで、なんの益があろうか。 『明日ありと 思う心の あだ桜』(親鸞聖人) 人の生命は儚(はかな)いものじゃ。 他人を押しのけ、見栄を張って、自分勝手に生きたところで、人の一生は短いものじゃ。 あっ、そうじゃ、人の一生は短いといえば、姫は〜〜。 なあ、三太夫! ……姫は一度でもよい、お見合いとやらがしてみたい。ホンマやで〜。 姫はお見合いの経験が一度もないのじゃ、なア〜、三太夫〜〜」 |
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「 | ゲ〜ッ、ひ、ひ、しめ〜〜、なにをいきなりマジ顔デ」 |
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「 | あっ、三太夫、いっておくが、いま流行(はや)りの女と男が集まって、さもしく互いに品定めをする、三太夫の好きな『合コン』とやらでは決してないゾ」 |
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「 | ひ、しめ……お、お熱を測りましょう〜」 |
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「 | ん〜、しかし、考えてみると、お見合い当日の食事代等々は、誰が出すのかのう……? 深く考えてみれば、究極のムダづかいかのう……」 |
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【三太夫覚え帖】 「『明日ありと 思う心の あだ桜』かぁ。さすがは姫! 奥の深い言葉でござりまするなぁ。 三太夫は、いくら考えても今の人類社会がこのままの状態で続いて行くとは思えんのじゃな。食べ物は粗末にする。平気で子供を殺す。金のためなら振り込め詐欺をして年寄りから金をむしり取る。宗教の名をかたって人を殺す。 外面は人間に見えても、内実は人間の本性を失った魔物がどれほど多いか。 神様、仏様がこんな人間を許されるはずがない。三太夫は終末論者でも新興宗教に入っているわけではないが、人類はこのままでは滅亡の恐れ大じゃ。 それにしても姫がお見合いをしたいとは……。しかし、合コンは決してしたくないとか……。これは、三太夫に「合コン」開催を暗ににおわしておられるのかな? しかし、食事代の心配をするとはさすがは姫。三太夫も、姫に見習って倹約をしなければ。いままで給料日には、パンにバターをぬった上から砂糖をまぶすという放蕩三昧の生活をしていたが戒めねば。姫に知れたら、また鉄扇をぶちかまされるやもしれぬわ」 |
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