【第二十六幕】 |
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「 | 姫! 三太夫でござりますぞ! おや? なんやら美しい音楽を聞かれておりまするな? なんという曲で?」 |
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「 | うむ。三太夫か。これはな『アルハンブラ宮殿の思い出』という曲じゃ」 |
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「 | 油紙ときゅうりが重いで? 変わった曲名でございまするな?」 |
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「 | アンポンタン! 帰れ!」 |
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「 | 姫! 今日の突っ込みは短すぎでございまするぞ! 用件だけで終わっておりまするぞ! 三太夫にもわかるように説明責任というのがあるのではございませぬか?」
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「 | 三太夫。その方から説明責任などという言葉が出るとは思いもよらなんだ。しからば説明して使わそう。アルハンブラというのはな、スペイン・アンダルシア地方にある、グラナダ市の南東の丘に建つ宮殿じゃ。作曲家のフランシスコ・タレガがこの地を訪問し、その印象をギター曲にしたのがこの『アルハンブラ宮殿の思い出』じゃ。油紙とは全く関係は無いのじゃ」 |
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「 | 姫! 三太夫も、そのようなことではないかと思っておりましたぞ! フランシスコ・タレガでございましょう! タレガ……タレガ……ねぇ。うーん、そうかぁ! つまりなんでございましょう。このタレガさんは小さい秋を見つけるのがお上手で……」
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「 | なんじゃ、それは?」 |
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「 | ♪〜タァレガさんが タァレガさんが タァレガさんが見つけたぁ。小さい秋 小さい秋 小さい秋 見ぃつけた〜♪ で、ございましょう」 |
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「 |
こりゃ! 三太夫!」 |
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「 | いや、姫! 今のは、冗談でございまするぞ! 本当は故郷を思う人でございましょう! ♪〜タレガ故郷を思ぉわぁざぁぁるぅ〜♪」 |
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「 | ダジャレを言う時の三太夫は、まるでフィギアスケートの羽生結弦のようじゃな」 |
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「 | えっ! 三太夫はそんなに若くて男前でございますか!」 |
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「 | いや、『上手に滑る』ということじゃ」 |
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「 | うまい! そのギャグいただき!」 |
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「 | 三太夫、姫は説明責任を果 たしたぞ! では、改めて申すぞ。アンポンタン! 帰れ!」 |
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「 | 姫! 三太夫は質問がございまするぞ!」 |
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「 | いつものパターンか。よし、よし。質問に答えたら直ぐに帰るのじゃぞ」 |
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「 | 姫! ヒーローものの元祖・ウルトラマンは宇宙空間を飛べるのでございまするぞ。なのに戦闘場面で怪獣に首を絞められると苦しむのでございましょう。息をしなくても平気なはずではございませぬか!」
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「 | 三太夫。いつもにまして情けない質問じゃのう〜。 ウ、フフフッ……その魂胆(こんたん)、姫には読めた! 『ウルトラマンの出自(しゅつじ)はM78星雲ということらしいから、彼の性嗜好(しこう)が“SM”のMである。じゃによって、首を絞められて喜んでおるのじゃ〜』 てな答えでも姫がするかと思ったのであろう! カ〜ン! ザンネンでした。 そのような愚かなワナに引っかかると思うたか! ご苦労さんじゃのう〜。 ウルトラマンはヒーロー中のヒーロー。しかし、そのヒーローにも弱点はある。その弱点を克服して正義のために戦うのが、真のヒーローというものじゃ、という話であろう。 どうじゃ、このような答えで、気がすんだか?」 |
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【三太夫覚え帖】 「なぁるほどぉ。三太夫は、ウルトラマンがてっきり首を絞められて喜んでいるものと思っておったがな。ずいぶんと危ないヒーローがいるもんじゃと考えておったが違うのか。 しかし弱点を克服するのがヒーローの中のヒーローなら、拙者もヒーローの素質は十分じゃ。なんといっても弱点だらけじゃからな。人からおだてられると調子に乗るし、けなされると直ぐにショボンとなるし。よく若いオナゴから退屈な男と言われるしな。これを克服すればヒーローになれるのか。案外簡単なものじゃな、ヒーローになるのも。 よし! 明日から三太夫もヒーローじゃ! 名前も、サンダユーバードと変えるか。ギャルにモテるぞぉ! すぐに有頂天になるのもワシの弱点か……」 |
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