幻舟のよろず相談劇場 (2)


 
 どんな問題でも、ひとりで悩むより、他者に聞いてもらうと、フッと、モヤモヤが晴れたり解決のヒントが見えたりすることが人生にはよくあります。
 他者から知恵を得ることも大切で、無知こそ人生の損失です。
 本コーナーは、ホームページを通して、人生経験豊かな花柳幻舟が多岐にわたる悩み相談に真剣に答える自由空間です。ひとりで悩まないで、ぜひメールを!




<幻舟さん、どう思います。ちょっと教えて!>
 
 私は、定年を1年後にしている夫(59歳)をもつ専業主婦です。
 恋愛結婚をして30年余。初めのころは、それほどでもなかったのですが、年月と共に暴君そのものに変貌(へんぼう)する夫。
 礼や感謝の言動は一切ありません。近ごろでは「オイ!」などと私を呼ぶのも平気。
 夫はセックスを求めるときも、どんな時間であっても、いきなり「オイ!」と一言のみ。下着を脱ぎ、仰向けになり、「ヤレ!」と、私に夫のペニスを勃起させるため、“性サービス”をさせ、大きくなったら、私が夫の上になり、夫が果てるまで、私だけが必死で、“サービス”に努めます。
 うまく射精できず、途中でペニスが萎(な)えてしまったりしたとき、決まって「ヘタクソ! もーいい、重たい、ドケ!」というと同時に、私を払いのけシャワールームへ。
 夫は、某有名商社の大幹部。3カ国語はペラペラ。海外にも始終 長期出張しています。日本でバイヤーなどの接待パーティーなどもよくあり、夫婦で出席しなければなりません。否応(いやおう)なしに、私も出席させられます。
 外ではしっかりレディファーストのマナーを演じていますが、自宅では、妻をまるで メイドやドレイ、娼婦のごとく扱っています。匿名で、会社に日ごろの彼の本性を 怪文書で出してやろうかと、衝動に駆られたことは数え切れないほどです。
 幻舟さん、私は離婚したいのです。
 今、離婚をいい出しても、強気な夫、きっと私を暴力でねじ伏せるし、離婚は対外的にも、あの男としては承服しないでしょう。弁護士を雇って‥‥、いや、それよりも、もっと復讐してやりたい!
 そうだ、定年退職になったその日、帰宅したそのとき、いきなり切り出すか。しかし、あと1年。
 うまい離婚のしかた、教えてください。
 私は、なんで こんな男の“性サービス係”をさせられるのか! ソープランドで働いていたらお金になり、お客さんも喜んでくれるかも、しかし‥‥。すみません、感情的なことを書いてしまって。
 様々な心理を読み解く 見事な幻舟さん、教えてください、妙案を。
 後になりましたが、子どもはおりません。
【神奈川県在住・50歳】


<ハイ お答えしましょう!>
 
 いろんなひどい人間を見聞きしてきましたが、これはウルトラ級でしょう。よく、今日まで我慢してきましたネ。
 賢そうなあなたのこと、少しずつでも、あなた名義の預貯金をしておられることと思いますが、そういうことは、いざというとき、大きな役にたちます。あなたの夫のような人間は、離婚のとき、慰謝料や、夫婦生活の中で作り上げた財産等も、法にのっとって分けるというような 紳士的というマナーも守らない可能性があります。しかも、二人だけの場で別れ話を切り出すのも危険です。
 いっぱし、まやかしのプライドだけはあるわけで、妻から離婚をいい出されて、
「オレのどこに文句があるんだ、何を悪いことしたというんだ!」
 と、いま流行の言葉でいう“逆ギレ”は目に見えます。
 私の友人の話ですが、離婚を切り出したら、
「一体オレのどこに不足があるんだ、何をオレがしたというのか!」
 といわれ、ボコボコに殴られ、離婚してくれない。
 私からいうと、
“オレのどこに不足があるのか、オレが何をしたというのか”
 と 傲慢(ごうまん)に開き直っていう、この言葉だけで、この男性のノー天気というのか、パートナーの悩みについて一度として考えたことのない、『お幸せな人!』だったといえます。そして、おまけに暴力。
 知人にとっては、ラッキーにも、それから2カ月後、その夫はスキーに友人たちと出かけ、骨折。
 病室に入ると、天井から片足を吊り下げられている姿。
 その瞬間、彼女は頭で描く間もなく口をついて出てしまった言葉。
「あの‥‥、オレのどこに不足が‥‥とか、オレが何をしたというのか、オレは何にもしていないと、あなた、いったけど‥‥、そこが問題なんです。私のこと、何にも理解できていないでしょう。とにかく、私はあなたを男として愛していません。これが答えです、すみません」
 というが早いか、病室から飛び出したという。
 背後に、“卑怯者、こんなときに、そんな話をするなんて!”と、身動きできない彼は、怒鳴りまくっていたといいます。
 彼女も、後日、
「卑怯者だと思ったけど、暴力が怖い、けど、自分の本心を言わねばとの 必死の思いで。私にとってはラッキーなチャンスだった‥‥」
 といっておられました。
 その後まもなく、彼から 名前を書き 印を押した 離婚届書がきたそうです。
 当然、恨みつらみをごまんと書いた 手紙も同封してあったとか。
 私は思うのです。
 彼女が身動きできない彼に向かって、
「男として愛していない!」
 の言葉は、彼を反省はさせなかったけれど、二人の関係に、愛情は完璧に消えていたことを実感させられたのでしょう。

 さて、あなたのことですが、私は、離婚すべきだと、心から思いますが、どうぞ、二人きりで離婚話を出さないで。
 身内ではなく、弁護士さんなど、第三者的な立会人がいいでしょう。
 それから、もし、調停に持ち込んだりした場合を考えて、日記をしっかりつけておくこと。
 恥ずかしがることはありません。
 セックスの折にどれだけあなた自身、屈辱的なことをさせられたか、侮辱されたか等々も、大切な離婚の理由になります。
 1年も我慢しなくても、と思いますが、定年退職で、仕事を失ったその日に、思いもよらない 離婚話! いわゆるひとつの“下克上”(げこくじょう)ですね、それは傑作。
 第2の人生を 楽しく、がんばって、ネ。


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