そうですね‥‥悪いヤツというのは、アレコレ、手口を変えて、時々に応じて、やさしい人を罠（わな）にかけてくるものです。 　こんなにチエがあるのなら、他に回して、世の中のタメに！　と思うのですが、ヤツらはチエや発想も豊かですが、根本が、なまけ者。 　人の情につけこんでせしめたお金を、ノラクラと、楽して暮らそうという魂胆（こんたん）の連中ですから、死んでも更生は不可能な、どうにもならないヤツらばかり。 　ま、こちらのほうが、危機管理といいますか、ヤツらより何倍も、先手必勝で英知を働かし身を守る、ということでしょうか。 　私のところにも、だいぶ前、 「オレ‥‥オレ‥‥」 　と小さい声で、探(さぐ)り探り、電話をかけてきたニイちゃんがいました。 　残念ながら、私に向って、 「オレ、オレ‥‥」 　などといって電話をしてくる人間は、この世の中に、今までも、現在も、誰ひとり、おりません。 　内容は、後々のこともありますので詳細は控えますが、私のことですから、思う存分、ニイちゃんをいたぶって楽しんでやりました。 「母ちゃんも、困ってんだ。おめ〜え、おらに、100万円バ〜、振り込んでくれねえか‥‥。口座はヨ‥‥」 　と、私が、即席の東北訛（なま）りを使い、泪声まで出して、熱演を演じている間に、「コラ、かなわん！」と思ったのでしょうか、相手の電話は切れておりました。 　久しぶりに、ひっくり返って、大笑いさせていただいた出来事です。 　あなたは、お母さんも未遂で被害なし、しかも、息子の声すらわからんくらいご無沙汰していたんだと、謙虚に愛情をこめて、その出来事をとらえてくださった。嬉しいですね。 　やさしさを、目覚めさせてくれた『オレオレ詐欺』君に感謝かも、ですネ。 　どんなに遠方で暮らしていても、常に家族が細かくコミュニケーションを取り合っていること、それが、被害を未然に防ぐひとつの手だと、私は思います。 　崩壊家庭や、人間関係崩壊してしまった、現在の社会を、実に端的に表した事件が、『オレオレ詐欺』のような気がします。 『オレオレ詐欺」など、殺伐とした犯罪なのに、なぜか心が温かくなるあなたのお手紙に、嬉しくなってしまいました。 　お母さんを、お大切にネ。