幻舟のよろず相談劇場 (2)

                   

 どんな問題でも、ひとりで悩むより、他者に聞いてもらうと、フッと、モヤモヤが晴れたり解決のヒントが見えたりすることが人生にはよくあります。
 他者から知恵を得ることも大切で、無知こそ人生の損失です。
 本コーナーは、ホームページを通して、人生経験豊かな花柳幻舟が多岐にわたる悩み相談に真剣に答える自由空間です。ひとりで悩まないで、ぜひメールを!




<幻舟さん、どう思います。ちょっと教えて!>
 街を歩いていても、電車に乗っていても、最近、とみに見かける服装の乱れ。おまけに言葉の乱れ。
 しかし、それぞれ、奇抜にみせているつもりなのでしょうが、個性のカケラもない、みな同じスタンプ押したような恰好と色彩。それも、見るのも気恥ずかしくなるようなデザイン。いや、デザインといえるようなものではないですね。
 幻舟さん、どう思われます?
 いつのころから、こんなひどい人ばっかりになったんでしょうかね。
 幻舟さんのご意見と、こういう連中にアドバイスをしてあげてほしい。
【東京都在住 40代 独身女性】



<ハイ お答えしましょう!>
 まったく、あなたがおっしゃる通り。まず、色彩感覚が、意識の中にないのかもしれませんね。
 女性が、スカートの下から下着が見えている? と思って、じーっと見たら、いわゆる重ね着らしい。
 とにかく、並んで立っただけでも、こちらが気恥ずかしくなる人、それも、男も女も同じで、色彩、デザインはメチャクチャ。
 おまけに、そういう人同士の会話のガラの悪さ。ガラが悪いというのではないのか、文法そのものが間違っていることにも気づかず、大声でしゃべりまくっている。
 早い話が、単なるおバカ、与太郎 与太子が増殖しているようです。
 この前、携帯電話でメールをしながら歩いている“腰パン”(ズボンを下にずらして オシリが見える恰好)姿の若者(先だってから話題の、スノーボード競技者 国母(こくぼ)選手と同じスタイル)が、高齢の女性にぶつかった。
 私の真ん前だったので、その高齢の女性を私がうしろから抱きかかえる感じで、ご本人、驚かれただろうが、ケガもなく、大事にはいたらなかった。
「大丈夫でしたか? どこか痛くしませんでしたか?」
 と問いかけている間、ちょっと振り向いたおバカ男は、そのまま行こうとするので、
「これ! 待て! 謝って行きなさい!」
 その瞬間、私は、声にしていた。
 そのガキ、肩をイカラして、
「なんだよ〜!」
 と振り向いて、私のほうへ戻ってきた。
「謝れ、いうてんねん!」
「何いってんだよ〜」
 と、つっぱらかり、肩をいっそうイカラせ、ズボンちょっと下へ引っぱったら、中身丸見せのマヌケなお姿で、私に近づいてきた。
 こんなおバカ相手にするのも時間がもったいないとは思ったが、一発、恫喝(どうかつ)してやらねば、クセになる!
「君な、この、お母さんにぶつかったんや! もうちょっとで、大ケガするとこや。そやから、謝れ、というたんや。そんな恰好して、そのスジにでもみせたいんか、チンピラが。ホンマもんのヤクザちゅうのはな、一見、カタギに見えるように、服装はきちんと、道はすみを歩く。カタギの衆に迷惑をかけんように生きてるんや! チンピラに限って、恰好だけで他人を威嚇(いかく)、それも弱い者いじめするんや。ズボン、ちゃんと上げんかい!
 エエか、コラ、お前らみたいなチンピラにもなっていない 与太郎が、ホンマもんの そのスジの者の足引っぱるんや! 私見て、そのスジの人間に見えるか? カタギの、単なる女にしか見えへんやろ? どや、どないや!
 ちょっと、うちの 事務所まで行こか?」
 いつの間にやらヤクザに変身して、なりきってしまっていた私(ここぞというとき、自分でない色んな人間に 変身〜ンするんです、私)。
 ここまで一気に、立て板に水よろしく、大見得きってゆっくり、怒鳴り上げてやった。
 私のヤクザ変身の途中くらいで、そのおバカニイちゃん、おシリまで見えそうにずらしたズボンをウエストまで引き上げて、小刻みに震えていた
「人さんにぶつかったら、謝る。歩きながらケータイはせん。服装で、なんぼ強そうに見せようとしても、中身がなかったら、意味ない。きっちり謝って、早よ消えんかい!」(上品に! 何度いうたらわかるの、幻舟さん!)
 私の言葉通り、小学一年生みたいに 気をつけ〜イ! して、何度も謝り 頭を下げて、足早に消えていった。
 その間の成り行きを、私の横にいて見聞きしていた高齢の女性は、
「あんな若者に、こんなに親切丁寧に、お説教してくれた人は、初めて見ました。おやさしい人ですね。今の世の中、みんな関わりたくない、知らんぷりばっかりですよ……本当にありがとうございました」
 そのあと、小さい声で微笑みながら、
「その“スジ”って、いい言葉。カッコよかったですよ、幻舟さん!」
 私のこと、すっかりバレていたのか……なんたる未熟。
 しかし、その間にも、大通りにもかかわらず、誰も口をはさんで、我々女性への援軍はなかった。
 冷たい世の中。サブ〜ですね。

 国母選手が、服装の乱れを指摘された謝罪会見で、
反省してマ〜ス」

 と人を食ったような発言も、動揺を悟られたくないカラ元気、エエとこ見せて、チンピラがカッコつけているだけのこと。
「出場停止! ほれ、飛行機のチケット。これ持って、トットと日本に帰ってチョウダイ!」
 てな、強烈、無情なペナルティでも科せばよかった。国民の税金で参加させてもらって、重責を担っているという自覚は、まったく皆無の、ノー天気。一発恫喝してやれば、このチンピラのためになったかも。

 人生、生きるか死ぬか、やるかやられるかの、真剣勝負 修羅場の経験をしていない人間は、表面だけ、それも、ピントはずれのカッコ付けて、見てくればかり気にする。
 本人 自己主張しているつもりが、右も左も同じような恰好して平気で、いや、それすら気づかず歩いていられる間は、真に中身のない証拠といえるのでしょうね。



過去の相談(1) 過去の相談(2) 過去の相談(3) 過去の相談(4) 過去の相談(5)
過去の相談(6) 過去の相談(7) 過去の相談(8) 過去の相談(9) 過去の相談(10)
過去の相談(11) 過去の相談(12) 過去の相談(13) 過去の相談(14) 過去の相談(15)
過去の相談(16) 過去の相談(17) 過去の相談(18) 過去の相談(19) 過去の相談(20)
過去の相談(21) 過去の相談(22) 過去の相談(23) 過去の相談(24) 過去の相談(25)
過去の相談(26) 過去の相談(27) 過去の相談(28) 過去の相談(29) 過去の相談(30)
過去の相談(31) 過去の相談(32) 過去の相談(33) 過去の相談(34) 過去の相談(35)
過去の相談(36) 過去の相談(37) 過去の相談(38) 過去の相談(39) 過去の相談(40)
過去の相談(41)