幻舟のよろず相談劇場 (2)

                   

 どんな問題でも、ひとりで悩むより、他者に聞いてもらうと、フッと、モヤモヤが晴れたり解決のヒントが見えたりすることが人生にはよくあります。
 他者から知恵を得ることも大切で、無知こそ人生の損失です。
 本コーナーは、ホームページを通して、人生経験豊かな花柳幻舟が多岐にわたる悩み相談に真剣に答える自由空間です。ひとりで悩まないで、ぜひメールを!




<幻舟さん、どう思います。ちょっと教えて!>
 “芸能界のセクハラについて”被害をこうむる私たち(女性)に、その難儀を回避できる方法を教えてもらえたら、と思って、メールしました。
 幻舟さんの著書でも、そんな話が載っていましたし、ぜひ多くの女性たち、これは芸能界だけの問題ではなく、働く女性にとって共通の悩みだと推察できることかと考え、苦労人の幻舟さんに、少しでも楽しく、仕事ができるようなアイデアをご伝授願いたく思います。

 私は、幻舟さんと映画でご一緒させていただいた者です。
 幻舟さんの人柄、人間性なども 近くでみせていただき、あのときからずーっと尊敬して今日に至っています。
 匿名でお願いします。
【東京都在住・独身 女優・40代後半(笑)】



<ハイ お答えしましょう!>
 あなたの芸名を聞けば、どなたでもご存じでしょう。そのような方でも、セクハラには 嫌な思いを 数限りなくされていらしたのですね。

 とにかく、セクハラ(エロオヤジ)が、肩で風切る芸能界。
 人格権さえ踏みにじられるようなことは、日常茶飯事です。
 私も、何十、何百と、エロ・プロデューサーや、エロ・アナウンサーなどに遭遇して生きてきました。

 もうずーっと以前のことですが、こんなことがありました。
 某朝番組のメインキャスターをつとめる局アナで、どうやら薄くなっている頭をカバーするため、カツラをつけているという、業界では有名な(本人は貴公子のつもり)方でした(もう、お亡くなりになったのか、近ごろとんと、見かけませんが)。
 何度か誘われ、エロい感じもなかったし、あまり断り続けるのも……と、お食事をご一緒しました。
 少しお酒が入ったせいかもしれませんが、タクシーに乗ったとたん、私の腰に手を回し、私の耳元で、
「自宅には、金曜の夜しか帰らないんで……局の近くにマンション、あるんだよ。ボクだけの。すぐ、近くだから……」
 甘くささやく声と共に、エロッぽいしぐさ。
 一瞬、エ〜ッ、この人も単なるエロオヤジかヨ?
 はて、困った。というのも、私は、当時、その局の仕事も多く、朝のワイドショーにもよく出ていたからです。
 確かに収入にも、ありついていました。
 しかし……なんぼなんでも、この人……? 挫折 皆無の、単なるエエとこのボンボン、もっとも嫌いなタイプ。
 お金くれても嫌や!!(コラー!)
 で、私の口から出た言葉。
「……うれしいけど……私ね、アノとき、コーフンすると、男の人の頭をかきむしる癖があるみたい……。○○さん、明朝も番組でしょう? そしたら、すご〜く早く起きてセットしないと……大丈夫……?」
 私の腰に回していた手を、私の言葉の途中ぐらいから、ソロソロと引っ込めていった。
< しめしめ、うまくいった…… >
 と、心の中でつぶやきながら、ニッコリの私。
「……せっかくのチャンスだけど、朝、本番のない日に……」
 と、心もとない声が、彼から返ってきた。

 この世界は、仕事場(セット)や、控え室に入ったら、プロデューサーが、「おはようございます」と、丁寧に一定の距離を置いて挨拶する方もいれば、ちょっと軽口にお付き合いしていると、“イケル”と思いこむ、自意識過剰のエロ・プロデューサーもいます。
 その典型が、次の話です。
 当時、制作会社のテレビのプロデューサーで、現在は、テレビワイドショー等で、文化人面し、公の場とは思えない、行儀の悪い振る舞いで、的外れの能書をいっている人です。
 彼は、誰にでもそうなのかもしれませんが、朝、現場に入り、顔を合わせるなり、
「幻舟ちゃん、おはよう……」
 と、いうが早いか、私の肩を触ったり、腰に手を回したりは当然のようにする。二人きりではなく、私の真横に、私の事務所の者が付いているんですよ。それでも平気なんですね。
 あまりのひどさに、一言ぐらいいうたろか! と思ったこともありましたが、モメ事はいかん、と、グーッと堪えていたら、図に乗ったのか、あるとき、
「プライベートの電話、教えてよ! 食事でもしようよ」
 と、せがむので、
「私はほとんど留守がちだから、××さんの番号、教えて……」
 と、私のほうから切り返した。
 この話、後日談があります。
 何年か前、私のファンの方が、某週刊誌を見ていると、そのプロデューサーが書いているコーナーに、私の名前をヒョッコリ見つけた。
『や〜、幻舟にも口説かれたよ〜』
 と、ご自分がさもモテモテだといいたかったのでしょう。
 タチの悪い、恥知らずにかかったら、ま、話はこのように、まったく逆に脚色されてしまいます。
 こんな話があります。 レギュラーの、準主役の女優さんが、いきなり海外へ移住や、病死になったりで、姿が消える。当然のことながら、相当無理なストーリーで。こんなテレビドラマもよくあるんですよね。
 私も知っていますが、これは、プロデューサーや 監督、力のある原作者の“ご所望”にうなずかなかった報復の例です。
 もちろん、この反対もありで、“ なんでこんな素人(しろうと)が ”と、いぶかるような女性を主役に抜擢。できない立ち回りまでやらせるドラマ、最近ありましたが、生臭い裏話を感じました。

 胸やヒップなど触られるのはザラ。言葉でのセクハラ、パワハラなど、日常的な世界です。
 嫌な顔をしようものなら、
「ダメだよ! そんな子どもみたいなこといってたら!」
 と、所属のプロダクションの社長に叱られるのがオチの例も知っています。
 ずーっと以前、私もプロダクションに所属していましたが、その実体を知り、女性を道具のように扱う商業主義に寒気がし、自分の事務所を作り、独立したわけです。

 芸能界では、団結して、セクハラについて闘うというのは、いまだありません。その点は、三百年は遅れた世界でしょう。
 胸やヒップを触ったり、エッチな話をわざとするのは、単なる冗談、男の特権とでも思っている、それに対して抗議するほうが、おかしいとさえ思い込んでいるのでしょう。ま、無神経な世界です。
 そんなイヤしい人間が権力を持っているから、なお、倍づけで難儀な話。対抗するのはしんどい仕事場です。
 ヒントとしては、決して、女を武器にして、芸能界の仕事はしない事。
 役を演じるのと、日常の自分とはまったく、異なるんだ、ということを、心の中に強く銘じておくことが、被害を少なくさせる方法かもしれません。
 また、メールくださいネ。



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