幻舟のよろず相談劇場 (2)

                   

 どんな問題でも、ひとりで悩むより、他者に聞いてもらうと、フッと、モヤモヤが晴れたり解決のヒントが見えたりすることが人生にはよくあります。
 他者から知恵を得ることも大切で、無知こそ人生の損失です。
 本コーナーは、ホームページを通して、人生経験豊かな花柳幻舟が多岐にわたる悩み相談に真剣に答える自由空間です。ひとりで悩まないで、ぜひメールを!




<幻舟さん、どう思います。ちょっと教えて!>
 はじめまして。
 ホームページで私の悩みと似た方の相談にのっていらっしゃるのを拝見し聞いていただきたく、慣れないながらもメールをしている次第です。

 2,3ヶ月前、住んでいるマンションの管理組合の理事会の方が修繕積立金をあまり適当とは思えない支出をしようとしていることを知り、夫が個人的に管理組合の理事長に意見したところ、その日から毎日、1週間、総会で承認されるまで深夜から無言電話が鳴り続け、午前2時すぎにはたまらず電話線をはずすということがあり、不安を感じた私が止めたので夫は総会では全く意見を言いませんでした。無言電話の相手はわかりません。
 その時の管理組合の理事会の一人が、マンション内の自治会長(町内会)になり、お祭りや子ども会も老人会もなくほとんどが仲間内の飲み会に会費を使われることに納得できず、夫が退会届を出したところ『自治会を退会したらマンションの共用部分を使用させない』という書類を渡されました。角印を押した正式な物です。
 分譲マンションなので共用部分は買ったときの各住居の値段に含まれ、維持管理や清掃員のお給料は管理費として納めており、そんなことは自治会で決められないと夫が言い返しましたが、『総会で規約をかえてやる』と言われました。
 今回は『ゴミ庫』と『自転車置き場』です。管理規約にもこれらは管理会社が維持管理と清掃をすることになっているにもかかわらず、書類によると『自治会が運用および清掃の管理をしている』と規約を変更し、だから自治会を退会したら使用できません。ということに了承するよう署名捺印を求められましたが持ち帰りました。
 いやなら自治会を退会するなということなのでしょうが、これに屈しなければ階段もエレベーターも自治会が管理しているから使用するなとエスカレートしていきマンションに住めなくなるのではと危惧しています。
 夫は、自治会費の使途を見直すなら自治会に戻ることはありえるがこの文章に屈したからとは思われたくないそうです。
 無言電話がその人であるかどうかはわかりませんが、今回の件はとてもまともな人がやることとは思えずここに住むこと自体が怖くて眠れません。
 どうかご助言をお願いいたします。
【都内在住・主婦Bさん・40代後半】



<ハイ お答えしましょう!>
 呆れかえる管理組合ですし、自治会(町内会)ですね。
 文面から推察するところ、大きなマンションのようですね。
 管理会社を雇っているようで、その業者への @ 管理費(マンションの清掃、管理費と積立金の徴収、雑用など) A 積立金(マンションの修繕費)、というものがありますが、このお金は居住者から毎月管理会社(業者)が徴収し、マンションの管理組合で選ばれた理事長が印鑑を、通帳を管理会社が管理(その逆もあり)。
 マンション管理組合(呼び方は違うところもありますが)は、マンション法の中にあります。マンションには必ず作らなければならない組合組織です。
 その組織には、理事長、副理事長、監事(経理・支出の管理)は、マンションの規模によりますが、最低一人ずつ必ず置かなければなりません。
 居住者のお金 @ A を預かっているのですから、理事長一人には任せません。マンションの規模によっては多数の管理者が必要となるのは当然です。これも当然、少なくとも一年に一度監査し、総会で会計報告もしなければなりません。そのとき、印刷物をもらっていますか? 当然印刷物を配布しなければならないのです。もし配っていないなら、請求権があります。
 Bさんのお話では、預かっている他人のお金を、総会にもかけずに、理事会の人間が気ままに使っている、ということは、

 刑法38章の横領の罪=第252条
 自己の占有する他人の物を横領した者は、5年以下の懲役に処す。


 判例=使途を限定して委託された金銭の所有権は、特別の事情がない限り、
    委託者の所有に属する。
 すなわち、管理組合(理事会)に預けてあるお金は、@ A に使うためであって、個人が勝手に使ってくれといっていない……という意味ですから、明らかに横領罪が成立します。

 建物の区分所有等に関する法律
 第4節 管理者=(選任及び解任)
 第25条 区分所有者は、規約に別段の定めがない限り、集会の決議によっ
     て、管理者を選任し、又は解任することができる。
   2.管理者に不正な行為その他その職務を行うに適しない事情がある
     ときは、各区分所有者はその解任を裁判所に請求することができ
     る。


 すなわち、Bさんがマンションに住む限り、不正をはたらいている管理組合の管理者、すなわち理事長を解任させることができるというものです。

 マンションには、@ と A のため、管理組合を作り、マンション購入と同時に入会するという、強制加入が基本です。
 しかし、入会したからといって、なにからなにまで管理組合に従わなければならないということではありません。
 たとえば50軒の部屋があるとすれば、区分所有者は、50分の1の権利を有しています。
 そのために、最低でも年に一度の総会を管理組合は開かなければならないとし、支出の報告や、これからの支出予定なども提示しなければなりません。
 それに対して、アイデアや権利の主張は、区分所有者であるBさん側に当然あります。管理組合側も、決議をとって、その議題を通すのですから、Bさん、堂々と、会議のときは出席し、自分の考えを述べてください。

 次に、町内会である自治会は、あくまでも任意団体です。まったくなんにも強制権はありません。マンションの運営に口出しなど、決して許されません。

 私の知人のマンションで、入居したら、自動的に自治会に入れられ、 @ の管理費の中から全入居者の会費を自治会に払っていました。そのことに気づいた彼は、管理組合の総会の折に、自治会(町内会)のできた歴史から述べ、敗戦後、しばらくは自治会は非合法であったことも含めて発言し、だから任意団体でしかないのだといったそうです。
「一年に六万円ぐらいの会費、いいじゃない!」などと、とんでもない暴言を発する入居者もいたとか。
 あくまでも任意団体の自治会への入脱会は自由。入りたい人は個人で入るべきだ、という結論で、マンション全体で20室、マンション管理組合規約による定数にいたり、全体で脱会の決議をとったのです。一人で頑張ったそうですよ。なんの恩恵も受けていない自治会に、勝手に入会させられて20年。20年の歴史を変革したんです。
 彼も自治会の会費の行方(ゆくえ)に不審を持ったところが出発点だといいます。自治会(町内会)に強制権がないにもかかわらず、マンションを購入し入居したら @ の管理費から自治会の会費を無断で払っていた。
 自治会長に直接、電話を入れ、経理について問いかけると、あいまいな返事が返ってきて、彼はそれでもしつこく経理の話をすると、自治会長は突然激高し、電話を一方的に切ったといいます。
 最近わかったことですが、管理組合の脱会決議のあと、自治会へ退会の手紙を管理会社から、マンション管理組合の理事長名で出してもらい、管理会社に市へも届け出をしてもらいました。
 『市だより』や『県だより』といった公報の冊子は、これまで自治会員から各戸に配布してきていたようですが、役所に自治会脱会を届け出たらすぐ、20軒分、2ケ月に一度、まとめてマンションに配達してくれ、各戸に配布するのはマンションの管理組合役員。
 配布手数料として役所から『謝金』との名称で、マンション管理組合に現金を払ってくれるようになったそうです。早い話がわずかながら、自治会には、これも収入として入っていたということです。


 Bさんが住む、区か町かわかりませんが、住んでいらっしゃる役所に(自治会を扱っている課に)電話を入れ、自治会名を告げて、自治会をやめたらゴミを出せなくなるのか、などこの間の自治会のひどさ、異常な話を知らしめるためにも、聞いてみることも大切です。

 マンションの管理組合と任意団体である自治会とは、なんら関連はありません。
 もし管理組合が臨時総会で議決をもらい自治会に管理組合の @ の仕事を移行した場合、陰でなんらかの不正が働いたとしか考えられません。
 大規模のマンション等には、管理組合とは別に任意団体である自治会(町内会)があったりします。しかし、組織はまったく異なりますから、役員・経理などすべて、一緒にはなりません。
 自治会といえども経理支出簿があります。これまで会費を支払ってきたBさんは会員ですから、閲覧の権利は充分あるのです。閲覧を申し込んでみるのも手ですよ。
 任意団体である自治会が、「自治会を脱退するなら!」と、恫喝、脅迫にも匹敵する、それも論理に矛盾だらけの常軌を逸した発言は、法に触れるものです。

 マンションとはなんら関係のない自治会の人間が発言した共有スペース使用の件。
 マンションには共有スペースがなければ生活できません。そして、いうまでもないことですが、特定の住居人たちの共有スペースでもありません。そのために、@ の管理費を支払っているのです。
 廊下やエレベーターなどは、そのもっとも大切な共有スペースです。
 Bさんのおっしゃる通り、共有スペースも含めての各戸の価値であり、価格等にも反映しています。
 参考になれば、と一つの法律を書きます。
 一軒家を建てるときに“袋地(ふくろじ)”で、表通りに出る通路がない場合、袋地から出るために周囲の土地(囲繞地=いにょうち)を通り抜ける権利が認められています(当然、無料です)。

 民法210条1項・この権利を囲繞地(いにょうち)通行権又は袋地通行権
 と呼びます。


 この法律を見ただけでおわかりのように、エレベーターや階段、廊下を使用せず、どうやって自室から出入りできますか? 人間としての生活権の侵害であり、基本的人権の侵害でもあります。

 日本国憲法 第3章 国民の権利及び義務 にもあるように、

 第10条「日本国民の要件」日本国民たる要件は、法律でこれを定める。
 第11条「基本的人権の享有と本質」国民はすべての基本的人権の享有を妨
     げられない。この憲法が国民に保障する基本的人権は、侵すこと
     のできない永久の権利として、現在及び将来の国民に与えられる。

 任意団体である自治会長の発言は、明らかに脅迫でしかありません。
 これだけ大きな問題を、自治会で勝手に決められないし、全入居者の管理組合総会による決議が必要となることはいうに及ばずです。
 長くなってしまいましたが、法律的なことは、なんらかの参考に。ご自分の資産である住居を守ると同時に、こんな傍若無人、無理難題を許してはなりません。
 管理会社(業者)にも大きくひびく問題です。この間の話を伝え、管理会社(業者)もはっきりしないようなら、自治会を扱っている役所に相談すべきでしょう(特に、共有スペースについての重大な問題を)。
 それらの行動をクリアしてから、自治会(町内会)の脱会のサインはするべきです。
 自治会員の方たちの中には、人と人との関わりの希薄なこんな時代だからこそ、お祭りや子供会、老人会など、必要だと痛感しておられると思いますよ。自治会費を一部の仲間同士のみで、勝手に飲み会などに使うなど言語道断です。
 日頃の親睦を通して、いざというとき助け合うという、自治会の真の意味、目的から異常に逸脱した行為には、腹立たしい限りですね。これも役所で話すとき、いってください。

 アッ、無言電話については、日時、書いていますか? 覚え書きをしておいたほうが、あとあとのためにも大切です。
 無言電話の件は、近所の交番に届け出も必要かと思います、念のために。

 住民として、当然の権利を述べているだけのこと。もし裁判を起こしたら、絶対、Bさんご夫婦、勝ちますよ(笑)
 精神的に辛いこともあるでしょうが、どうか、ゆったりとした気持ちを持つように。Bさんご夫婦は、なにも理不尽な話をしているわけではないのですから。
 この問題、私も気にしております。メルマガを読んでくださっている方たちも、きっと気にかけてくださるでしょう。結果に至る奮闘記を、どうぞお知らせください。
 自治会長の恫喝まがいの発言だけでも、相手の動揺が手に取るように見えます。
 Bさん、どうぞ、焦らず、ネ。



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