幻舟のよろず相談劇場 (2)

                   

 どんな問題でも、ひとりで悩むより、他者に聞いてもらうと、フッと、モヤモヤが晴れたり解決のヒントが見えたりすることが人生にはよくあります。
 他者から知恵を得ることも大切で、無知こそ人生の損失です。
 本コーナーは、ホームページを通して、人生経験豊かな花柳幻舟が多岐にわたる悩み相談に真剣に答える自由空間です。ひとりで悩まないで、ぜひメールを!




<幻舟さん、どう思います。ちょっと教えて!>
 我が家には重度の知的障がいを持つ小学4年生の息子が居ります。
 発語は全く無く、奇声・パニック・自傷行為が有り、コミュニケーションはかなり難しいですが衣食住には困らず、自身の事も最近、たくさん出来るようになりました。少しですが自分の名前が平仮名で書けるようになりました。
 2年前のお話で申し訳ありませんが読んでやって下さい。
 仕事で会議が有った為、実家に子供を預かってもらったのですが、2010年5月11日20時、大阪府A警察生活課の刑事2名が虐待の通報が有ったとの事で訪問、子供を確認し帰りました。
 我が子は発語が無いので嬉しい時や楽しい時などに両手をパンパン叩きます<衝動行為と言います>。この行為が子供を虐待していると近所の誰かが通報したらしいのです。障がい持つ孫を何の抵抗もなく預かってくれている両親は深く傷つきました。
 21時30分、私は療育手帳を持参し、子供を連れ、大阪府A警察署へ行きました。対応したのは制服の男性中年警官と女性中年警官でした。
 私は療育手帳を机の上に置き、障がいを持っている事、衝動行為の有る事を説明した上で障がい者・児に対する名誉毀損にならないのか、間違われた者に対するケアはどうなっているのか、聞きました。返ってきた返事は、
「法律の本を開けてみろ、そんな事は載っていない、通報があれば、現場に行くのが仕事、間違われた人間の事まで知らん」
 でした。
 後日、障がいをお持ちの息子様がおられる方にこの出来事をお話すると、ある党の方に連絡して下さり、後日、A警察副所長(今となっては本当か分かりません)から連絡がありました。
 11日の対応を説明すると、
「本当にそんな対応をしたのか、信じられないので確認次第連絡する」
 との事でした。もちろん、その後何の連絡もありません。学校・児童相談所・役所には全てお話いたしました。
 虐待防止のコマーシャルで「間違ってもいいんです」と発言されています。通報で救える命は何よりも大切です。ですが間違えられた方への心のケアは全くないのです。両親は2年経った今も預かってくれています。障がい児を持つ家族の皆様がこのような悲しい思いをされないよう祈るばかりです。
【大阪府大阪市在住・匿名希望】



<ハイ お答えしましょう!>
 日々、児童虐待のニュースが目につきます。
 愛人を引きとめるためや、愛人が暴力的な人だったりしても、性に溺れ、けものと化して、自己を見失い、自分の子宮で育てた自分の分身でもある、それも幼児を。それ以前に、非力で無抵抗な幼子を、愚か過ぎる男の欲望の奴隷となり、共に虐待や、筆舌につくせぬ残酷きわまりない暴力行為を繰り返す大人たち……。また近所隣の関わりのない近年では、たったひとりでの子育て。おまけに夫との会話も希薄。ストレスのたまることの多い育児。“子どもは泣いて育つ”といいますが、たったひとりで子どもと向き合うということは、並たいていのことではありません。冷静さを失い、思わず手が出た! そのため子どもが怯えて、なお泣く。暴力という意識もなく叩いてしまったという例も多くあります。
 人と人との愛情の欠如といってしまえば、それっきり……、ニュースを見る度、怒りと共に、私など、生きていくことへの希望さえ失っていきます。
 もめごとに関わりたくないという、自立や自由のはき違いなのか、見て見ぬふりをする近ごろの気風……私など毎日のように嫌な思いをしております。
 あとを絶たない幼児虐待と、見て見ぬふりの大人たちに対して、ついに「通報の義務」という法律まで制定。
 人と人との関わりや、やさしさなどの行動を法律で表示しなければならないこと、そのことにニホンの今日を見る思いです。
 私はこのご相談を読ませていただいていて、あなたの真からの正義感と、人としての情愛の深さ、人としての尊厳を行動で示すことに感服いたしました。
 『通報』があったからといって、行動してくれたまではいいのでしょう(ひごろ動かない警察が)が、しかしそれが的外れの、とんでもない大間違いを犯してしまった。
  世論に対してアリバイ的に作られた法、『通報の義務』ですから、「もしも間違いだった折は……」などという人間味など皆無で、現法にもとづいて出動したのでしょう、だから、あなたの抗議に対して上から目線での対応となったものと、私は推察します。
 『通報の義務』が、真から人と人との情愛のために作られたものではないということを、この警察官たちの対応が、端的に示しています。

 「児童虐待防止」のテレビCM等々を、どのような経緯で、どのような組織が作ったのかについて調べました。
 CMの内容には、次のようなものがありました。
(2011年・テレビCM完成)
 Aパターン
  【ナレーション】<見えにくい編>
   虐待は見えにくい。
   「もしかして…」
   と思ったら、ためらわずにお電話を。
 Bパターン<虐待シグナル編>
  【ナレーション】
   児童虐待防止のための大切なお願いです。
   長時間、泣いている。
   深夜、外に出されている。
   からだや服が、汚れている。
   間違っていても、構いません。
   「もしかして…」
   と思ったら、ためらわずにお電話を。
 放送局や地域によって、AパターンやBパターンを放送したようです。
 Bパターンの中に、「間違っていても構いません」という文言が出てきています。
 児童相談所に、私自身の名前を名乗り、お電話を入れ制作会社(行政など)をうかがいましたが、電話に出られた女性の方は、CMそのものは知っているが、どこで作られたものか、わからない、との返事でした。
 そこで、“児童虐待”というキーワードでネット検索も試みてみました。
 私の調べた限りでは、はっきりとした製作会社や、それを依頼した組織については曖昧でした。
「府内市町村や虐待防止団体等が、施設やイベント等において利用できる広報映像も制作中」(大阪府福祉部子ども室家庭支援課のホームページ)
 という文言もあり、推察するに、行政内で作られた、ご相談の“啓発活動用”のCMができたと思われます。映画館などでも本編の始まる前には放映しているところもありました。
 私は思うのです。
 あきらかに異常で、餓死した幼児や、躾(しつけ)と称して幼児に向けての暴行など、子どもたちを助けるため、見て見ぬふりの大人たちに対しても、行動は必要です。
 しかし、あなたのような事案は、他にもあるのではないでしょうか。
 そのとき、どう対処するのかということまで思考し、討論して、このキャンペーン用の文言を作ったのか……。どうみても世論に対してのアリバイ作りのキャンペーン啓発作品にしか見えません。
 私は、それほど深い意味合いを込めて、啓発用のためのCMを作ったとは決して思われないのです。
 本気で作られた啓発用のCMなら、もっともっと深い愛情が感じられる文言が出たはずです。
 ところで、あなたのご両親には頭がさがります。
 あなたのご両親様に負けないよう、私も講演等の場で、この出来事を広く伝えてまいります。

 虐待行為と間違えられた人たちの心のケアを、どのようにしているのか。
 私なりに行政へ問いかけ続けてまいります。
 どうぞ、あなたのご両親様に、健康に留意されて、あなた様もご子息様も、お身体お大切に、日々お過ごしくださいますように。
 なお、警察、虐待防止等を扱う行政等々に連絡や電話、直接面談の折、必ず相手の姓名を聞くこと、そして連絡の日時のメモを忘れず。後々のために、絶対に必要です。


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